「あなたの番です」の熱狂に見えたドラマの未来

視聴者の今をとらえたコンテンツのすごみ

さらに、仕掛けという意味でビジネス的な価値が高いのは、Huluとの連動企画「オリジナルストーリー 扉の向こう」の成功。Huluとの連動企画は、有料コンテンツのため何かと批判を集めやすいのですが、今回はファンサービスとしてしっかり機能。熱心な視聴者を喜ばせ、作品への愛情を育んでもらうとともに、会費という点で利益につなげました。

視聴率という表面上の数字には表れない「作品への愛情を育む」という戦略は、有料コンテンツへの誘導だけでなく、映画化、関連グッズ販売、イベント開催などの利益性の高いビジネスにつながっていくものでもあります。

前述したように『あなたの番です』は、連ドラとしても、長編ミステリーとしても、半年間放送という異例の作品。通常よりも視聴者との接触期間が長く、接触回数が多いため、一人ひとりの生活に入り込み、「ただ暇だから」「ちょっと好きだから」というレベルを超えて、「わざわざ見る」特別なものとなっていきました。

これは裏を返せば、序盤でつまずいてしまうと、残りの長い放送期間を棒に振ることになるだけに、ハイリスク・ハイリターン。やはりこれほどのヒットコンテンツを生み出すためには、“安全策”と言われる刑事モノや医療モノ、一話完結のミステリーではなく、リスク覚悟のチャレンジが必要なのでしょう。

そのことは2010年代のヒットコンテンツである『家政婦のミタ』『半沢直樹』『逃げるは恥だが役に立つ』『おっさんずラブ』の内容を見てもわかります。

『あなたの番です』の関係者たちが、「本当に大丈夫なのか?」「もし失敗したらどうしよう……」という不安を乗り越えて貫いた挑戦の姿勢は、今後のコンテンツ制作に一石を投じるのではないでしょうか。

連ドラの弱点「守りの戦略」も抜かりなし

ここまで攻めの戦略が奏功したことを書いてきましたが、『あなたの番です』がすごいのは守りの戦略も優れていたこと。「第1話を見てもらえなければアウト」「途中から視聴しづらい」「一度見逃したらついていけない」という連ドラ、とりわけ長編ミステリーの弱点を巧みにカバーしていたのです。

制作サイドはまず放送前にツイッターで、番組ポスターが100人に当たる「#最初の被害者を推理せよ」キャンペーンを第1話放送中の23時まで行い、視聴者の関心を引いて「第1話を何とか見てもらおう」と努めました。

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