「あなたの番です」の熱狂に見えたドラマの未来 視聴者の今をとらえたコンテンツのすごみ

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その後、放送を見逃してしまった人のために、気軽に見られる各話の「5分でわかる〇話ダイジェスト」を配信。同時に公式ホームページの「あらすじ」には、「以下ネタバレはこちら」というボタンをつけて、詳細を書き込んでいます。

さらに、5話分を12~20分程度にまとめた動画「あな番まとめ」をパート3まで配信。これ以外にも、中盤に「重大なヒント」動画、最終回3日前に「最終回への『謎』まとめ」動画を配信するなど、見逃してしまった人やポイントがわからなくなってしまった人もついてこられるようにしています。

これらの動画は、山寺宏一さんにナレーションを依頼するなど、使うべきところに経費を使い、クオリティーにもこだわる仕事ぶりは、称えられてしかるべきものでしょう。

なかでも、私が最も驚かされたのは、折り返し地点となる第1章を終え、特別編が放送された6月23日から第2章が始まる30日まで、「第1章の全話と特別編を無料配信」したこと。もともと各話の見逃し配信は放送後の1週間限定であり、全話見られるのは会費の必要なHuluだけでしたが、思い切って無料配信に踏み切ったのです。

また、2週間後の7月14日から28日にも、「1~13話の放送分を無料配信」するなど、「ちょっと興味を持った人」「全話見られなかった人」「謎解きのためにもう一度見たい人」に向けたサービスを徹底。このような全話無料配信のサービスは、Huluの会員数アップを阻害しかねないものだけに、自社の利益よりも視聴者の利便性を優先させる英断と言っていいでしょう。

「作品の質」よりも求められるもの

攻めと守り。どちらの戦略においても、それほどテレビを見ていなかった人や、あまりドラマを見ていなかった人々を振り向かせた功績は大きく、『あなたの番です』は今後のエンタメコンテンツシーンに多大なる影響を与えるでしょう。

ただ前述したように、仕掛けの巧みさはドラマ史に残るものだった一方、「脚本・演出の質が高い」という声は、あまり聞こえてきません。実際、映像の技術や美しさ、物語やセリフの洗練度、俳優の演技などでは、『あなたの番です』を上回るドラマは少なくないですし、例えば殺人の動機、犯行手段、死因などは粗さが目立ちます。

だからこそ『あなたの番です』にフィットするのは、“名作”というより“すごい作品”というイメージ。希代のプロデュース術を持つ秋元康さんが企画・原案を務めていることも、その印象を強くしています。

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