シンクタンクがこれからの日本に必要な理由

三浦瑠麗「戦間期的な危うさを感じる」

彼に「なぜここにインターンに来たの?」と訊ねると、「自分は国際秩序について興味があって勉強もしたんですが、ここでまさにそのプロジェクトをやっていたから」との答えでした。2017年春、「自由で開かれた国際秩序(Liberal International Order)」に関する国際研究チームを編成、1年半、共同研究し、今年11月にブルッキングズ研究所から『Crisis of Liberalism Japan and International Order』というタイトルで本を出版します。彼はそのことをAPI(アジア・パシフィック・イニシアティブ)のホームページで知って、うちに来たんですね。

最後のオンローンは出向者です。国際協力銀行(JBIC)と自衛隊から出向者の方々が来てくださっていて、いろんなプログラムを一緒にやっています。もちろん、自前のリサーチャーもコア・スタッフもいます。

政権交代は必要か

三浦:今後の日本の政治についても伺いたいことがあります。民間のシンクタンクとしては、現政権の政策に対するプランBを常に用意しておくことが必要ではないかと思っています。プランBが採用されるためには政権交代が必要だと思われますか。震災の前に、日本の政治は政権交代を経験しましたけど、結局のところ日本の政治は活性化されずに今に至っています。安倍総理は民主党政権の三年間を「悪夢」と形容しましたが、それは自民党にとってであって、それなりにいいこともあったはずです。日本における政権交代をどのように総括され、今後、何が起こると思われていますか。

船橋:政権交代は必要ないとは言いませんが、政権交代のための政権交代なら、それがいちばん重要なことだとは思えません。僕のシンクタンクでも『民主党政権 失敗を検証』(中公新書、2013年)を出しましたが、この政権は「政権交代」だけをアジェンダとしてきたようなところがあって、財政・財源にしても、外交・安保にしても、そう簡単に「交代」を叫べない重い現実を相手として、大きくつまずいてしまった。

政権交代は競争原理の結果で、新陳代謝の一環ですから、ときどきあってしかるべきだと思いますが、問題もはらみます。その1つの問題は、前政権をすべて否定しようとするanything but、anybody butの硬直性にあるのではないか、と思います。日本だけでなく、例えば、トランプも同じですね。ヘルスケアにしろTPPにしろイラン核合意にしろ、オバマ政権の成果をすべて否定することに情熱を燃やしているように見えます。韓国の文在寅政権の対日政策も似たようなものですね。朴槿恵保守政権の慰安婦合意や元徴用工問題への対応を全否定するところから始めてしまったために、いま、日韓関係はにっちもさっちもいかない状況になっています。

日本に関して言えば、それでも内政に関してはまだなんとかなると思っています。心配なのは外交です。最も由々しきことは、北東アジアが“バルカン化”していることです。中国と台湾、中国と韓国、日本と韓国はいずれも緊張しています。そして幾分好転したとはいえ日本と中国も長期的には戦略的ライバルであり続けるでしょうし、ロシアと中国が“修正主義国連合”を形成し、この地域の戦後の国際秩序とアメリカ中心の同盟システムを揺さぶっています。

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