シンクタンクがこれからの日本に必要な理由

三浦瑠麗「戦間期的な危うさを感じる」

今回、『シンクタンクとは何か 政策起業力の時代』(中公新書)で、日本に「官邸フェロー」をつくろうという構想を提示しました。これは、各分野の30歳代の人たちに、1年間、「霞が関」で主にスタッフとして働いてもらう構想です。民間で働いている人たちにじかにパブリック・サービスをする機会を与える、それによって政策や政策起業に関心を持ってもらう。そして、そういう人材が専門性を身につけ、社会で経験を積んだあと、再び政府で働くキャリアパスを日本にもつくろうという試みです。

アメリカにはホワイトハウスフェローズ(WHF)という制度があるんです。連邦政府が予算をつけて、毎年40人近い若者が1年間、連邦政府で働くのです。ベトナム戦争当時、社会が荒廃し政府に批判が高まったときに始まった試みですが、その中から、パウエル(コリン・パウエル国務長官=ブッシュ政権)さんやキャンベルさん(カート・キャンベル国務次官補=オバマ政権)、またハガティさん(ウィリアム・F・ハガティ駐日米国大使=トランプ政権)らを輩出しています。

つまり、公のために奉仕しようという市民を育てる制度ですね。アメリカのまねごとのようでちょっとしゃくですが、日本もそういう制度を作ったほうがいいと考え、「官邸フェロー」と銘打ってみました。先日、自民党の行政改革本部でプレゼンテーションする機会をいただきました。おかげで、行革本部の政府に対する提案の中に入れていただきました。実現まで、しぶとくキャンペーンしていこうと思っています。

リターン、インターン、オンローン

三浦:それは素晴らしいことですね。日本では、若い人たちの業界を超えた交流が少ない。そこに新たな人間関係や協力の積み重ねが生まれる可能性もありますね。

シンクタンクの運営についてお聞きしたいのですが、どんな人がどのようなモチベーションで先生のシンクタンクに入ってきているのですか。

船橋 洋一(ふなばし よういち)/1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。1968年朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年~2010年12月朝日新聞社主筆。現在は、現代日本が抱える様々な問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある。主な作品に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』(2013年 文藝春秋)『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(2006年 朝日新聞社) など(撮影:梅谷秀司)

ところで、どんな人がどのようなモチベーションで船橋さんのシンクタンクに入ってきているのですか。

船橋:リターン、インターン、オンローンと言っているんですけど、1つは帰国子女です。海外で修士号をとって帰国したけど思い描いたキャリアパスにマッチングする就職先が見つからないので、ちょっと置いてほしいという人ですね。大歓迎です。それから、インターンですね。おかげさまで、シンクタンクの中ではインターン先として大学生の人気ナンバーワンです。今、17人来ています。

欧米からリサーチアシスタントにオックスフォードやケンブリッジなど海外から優秀な人材が来てくれていますし、日本人のインターンも、各人が自らの専門分野でとても一生懸命仕事をしてくれています。

この春、インターン志望で面白い子がやってきました。まだ高校3年生なんです。高校生のインターン志望は初めてでした。ご両親は中国人で、官費留学生として日本にやってきたエリートだったけど、天安門事件が起きた。それでそのまま日本に残り、がむしゃらに働いた。子どもには中国語も教えず日本人として育てた。そういう家庭のお子さんなのですが。東大、ハーバード大学、プリンストン大学、エール大学にみんな合格して、結局ハーバード大学に行くことにした。

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