以上について、アメリカ社会と政治の常識に照らし合わせてみると、「今日現在は五分五分としても、トランプ大統領の政治力、選挙戦術の手腕から見て、最終的にはトランプ大統領が勝つ可能性が高い。それについては、トランプ支持者以外の多くの人々も、そう予測している」と筆者は解釈している。
2つの世論調査をまとめると、トランプ再選不利を明示したフォックスの世論調査が正しいとは言えない。
トランプ再選を目指す4つのキーワード
6月18日の再選出馬宣言で、トランプ大統領が明らかにした再選を目指すうえでのメッセージは、次の4つのキーワードに集約されると筆者は分析している
② メキシコ国境とアメリカ社会の安全問題
③ 健康・医療保険問題
④ 中国問題
①の「反エスタブリッシュメント」には2つの意味がある。1つは、一般的に「リベラル・エスタブリッシュメント」と呼ばれるアメリカのメディアだ。もう1つは、知的エスタブリッシュメントとして、「反トランプ」を形成するグループである。例えば、民主党有力候補の1人であるエリザベス・ウォーレン候補は、全米的な「破産法」の法律権威として名をはせた、いわば「知的エリート」である。
そのウォーレン候補は、選挙公約として「学生ローン帳消し」を打ち出している。教育者として輝かしいキャリアを持つウォーレン候補は、学生ローン問題については、自らの守備範囲であり、専門分野でもある。
2019年に全米の学生ローンは、1.4兆ドル(約150兆円)に上る。このかなりの部分の債務帳消しを、ウォーレン候補は選挙公約にしている。この学生ローン債務は、過去10年間で2倍以上に拡大し、全米的な問題となっている。この学生ローン帳消しの公約で、ウォーレン候補は票を伸ばしている。
ところが、アメリカで学生ローンと言えば、大学生の学資ローンのことである。日本のように中学・高校での受験地獄が存在しないアメリカでは、学生ローン債務帳消しとは、一般的には「大卒」を優遇する措置にほかならない。
全米メディアで非常に有名なデータとして、「大卒でない白人」はトランプ大統領を支持し、「大卒白人」は民主党候補者を支持するという統計がある。ウォーレン候補は、この学生ローン帳消し公約を、アフリカ系アメリカ人の大学生への特定の気配りとセットにした公約としているが、ウォーレン議員へのアフリカ系アメリカ人の票は、彼女の思惑のようには伸びていない。
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