日本政府は韓国の輸出規制を再考すべきだ

WTOで争えば、より大きなリスクを招く

6月に開催されたG20サミットで、韓国の文在寅大統領(左)を出迎える安倍晋三首相(写真:時事通信)

日本政府は7月4日、外為法上の輸出管理対象となっていたフッ化ポリイミドとレジスト、フッ化水素について、韓国への輸出規制を強化する手続きを開始した。

対韓国輸出を包括的許可から契約ごとの個別審査に切り替えると同時に、韓国をホワイト国から外す手続きに入るという。これに反発した韓国は、本件をWTO(世界貿易機関)の紛争解決手続に付託する方針だ。

問われる安全保障貿易管理とWTOの整合性

今回の対応については、徴用工問題を踏まえて妥当な対抗措置と称賛する声や日韓関係の悪化を心配する声、日本の半導体産業への悪影響を懸念する声などさまざまな評価が出ている。筆者が専門とする国際経済法の視点からは、WTO協定、特にGATT(関税及び貿易に関する一般協定)違反の可能性が指摘されているが、筆者はむしろそれを超えた国際通商システム全体への影響を懸念している。

韓国がもし、今回の措置のWTO協定違反を争うとすれば、それは安全保障貿易管理体制がWTO協定に整合しているかどうかを正面から問うことに他ならず、両者に内在する緊張関係が白日のもとにさらされるおそれがある。

日本政府は今回、韓国でフッ化ポリイミドなどの輸出管理に不適切事案が発生しており、韓国が具体的対応の要請に回答せず、3年間も両国間対話がないと説明している。そうであれば、筆者は必ずしも今回の措置が安全保障貿易管理制度の合理的な運用の枠内にあることを否定するものではない。

しかし、官邸はシステム全体へのリスクを勘案して今回の措置に踏み切ったのだろうか。日韓関係の現状や実施のタイミング、対象物資の性格を考えると、今回の対応が韓国の強い反発を招き、WTO協定との整合性が問われることは容易に予想できたはずだ。もしそうでないとすれば、拙速な悪手と評さざるを得ない。

一般的に言って、安全保障貿易管理措置は正当なものであってもWTO協定違反になりうる。特に、輸出許可の申請が必要な場合、部分的にせよ審査の結果輸出が制限される制度設計である以上、輸出制限を禁じたGATT11条1項に違反する。

また、ホワイト国制度のように特定国を輸出審査で非対象国と差別することは、WTO 加盟国間の待遇平等を規定したGATT1条1項に違反する。判例では相当広い範囲の措置について違反が認定されており、また、その判断の際に差別の政策的正当性を斟酌していない。

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