「地方の高校」にあえて進学する子どもの心情 島根・隠岐島前高の学生に見る進化
尊敬する同業者の子息が島根の県立高校に進学した。都内の帰国子女も多い私立高と天秤にかけ選択したというが、偏差値や進学という観点で言えば明らかに都内私立高が有利だ。地方での寮生活は出費もかさむだろうにあえて島根。そこに何があるのだろう?と思った。
年間約350人――。決して多い数字ではないが、友人の息子のように親元を離れて地方の公立高校に留学する子どもたちがおり、その数は年々増えている。
「島留学」で入学者数が倍以上に
きっかけとなったのは、まちづくりの先進事例として知られる島根県海士町にある隠岐島前(どうぜん)高校の「魅力化プロジェクト」だ。海士町は、2002年には借金が100憶円を超え、夕張市に続いて財政再建団体へ転落するとまで言われた状況から行財政改革や、産業創出による島のブランド化と、あの手この手で町を改革。今では、年間100人程度(2011~2014年は平均139人)のUIターンが続く地域である。
島前高校も同様に2008年には入学者数が30人を切り、このままいけば島根県の高校統廃合基準である21人を下回る危機が目前に迫っていた。島に1校しかない高校がなくなれば、15歳になった子どもたち、場合によってはその家族もろともに島を出ていってしまう。
それを防ぐためにと考えられたのが、島外の子どもたちを島の高校に呼ぶ「島留学」である。だが、単に「来てください」では誰も来るはずはない。そこで海士町では2009年に「島前高校魅力化プロジェクト」を立ち上げ、課題解決型プロジェクト学習など特徴的なカリキュラムを開発すると同時に、地域総がかりで子どもの学習を支援する体制を作りあげた。
このプロジェクトは、驚くべき数字をたたき出した。4年後の入学者数は倍以上の59人になり、この年には僻地の高校としては異例の、定員40人から80人へ学級増が行われるほどに。現在では新入生の4割強が島外からの生徒で、それに刺激を受け、島内の中学校からの入学志願率も増加している。子どもの地域外流出に歯止めがかかったのである。
この成功に影響され、島根県では2014年度から県外から県内の公立高校に生徒を呼び込む「しまね留学」をスタート。2019年には26都道府県から195人が留学している。さらに2017年からは島前高校の魅力化を推進してきた岩本悠氏などが「一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム」を立ち上げて全国に活動を拡大。「地域みらい留学」の名の下に現在では26都道府県55校が登録、地域外からの生徒受け入れを行っている。
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