「地方の高校」にあえて進学する子どもの心情

島根・隠岐島前高の学生に見る進化

さて、ここで疑問だ。存続が危ぶまれる離島など僻地の高校、そして高校がなくなると衰退に拍車がかかる地元の市町村が一致団結して子どもたちを呼びたいのはわかる。地域の子どもたちにとっても違う土地から来た同級生は刺激になるだろう。

しかし、都市から地方の公立高校に進学する子どもたちにとっては何がメリットなのだろうか。地方でも有名進学校ならメリットは明確だ。だが、地域みらい留学の場合、偏差値で考えると学校によってはあまり高くないこともある。最近では高校時代の活動などが対象となる推薦入学はあるものの、「いい学校に進学する」という視点では微妙である。では、何が――。

「留学フェスタ」に訪れる人たちの目的

それを知ろうと東京で行われた「地域みらい留学フェスタ」を訪れた。北海道の奥尻高校から沖縄の辺土名高校までの55校が参加するフェスタには、しまね留学の説明会も開かれ、島根県の小中学校留学のブースも出る。事前申し込みが必要だったにもかかわらず、この日は1100人ほどが来場。会場となったホールには各校のブースが並び、先生、在校生、卒業生などが来場者に説明をし、質問に答えている。

隠岐島前高校のブース(筆者撮影)

何より驚いたのは説明などに当たる高校生たちがしっかりしていることだ。自分たちで作った地元紹介の冊子(よくできているのだ、これが!)を示しながら島の魅力を語り、学校での毎日を説明し、自分が留学してどう変わったかを熱弁するなど、大人顔負けなのである。

その思いを強くしたのは現役生と卒業生が行ったプレゼンテーションだ。100人ほどの前で留学のきっかけや留学で変わったことなどを話すのだが、大人でもこれだけの人の前では緊張する人もいるだろう。ところが、当日舞台に立った2人はごく普通の顔で、下書きを見るでもなく、明確に自分の言葉で語った。これで高校3年生か!である。

その理由は2人の話と、その後にあちこちのブースで聞いたことから理解できた。1つは大人との関わりだ。多くの高校が少人数教育を行っており、小さい学校だと生徒数は3学年で数十人、多い学校でも400人強と、先生1人当たりの生徒数が都市とはまったく異なる。「全校で180人ですからね、一人ひとりに目が届きますよ」(島根県立津和野高校・熊谷修山校長)とまず、校内の状況が違うのだ。

少人数教育だけなら都市の高校でも実現可能だろうが、都市では実現しにくいのが地域のさまざまな大人との関わりだ。地元のイベントに参加したり、自分で設定した地域やコミュニティーの課題を地域の人に取材したりして、特定の問題の解決法を探る課題解決型プロジェクト学習など、地域の大人と触れ合うチャンスが多いのである。

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