「地方の高校」にあえて進学する子どもの心情 島根・隠岐島前高の学生に見る進化
子ども扱いしない、きちんと向き合ってくれる大人たちにもまれれば成長も早いというもの。会場では留学中の高校生たちから「自分と意見の違う人の声を聞くことが大事」「迷ったときには周囲の人たちに聞く」などの言葉が聞かれた。一般には、都市には多様性があり、地方は同一性が高いという言われ方があるが、実際のところはどうか。
とくに子どもという観点でみると、都市で子どもが接する大人は先生と親くらい。全国から集まる同級生に加えて、地元の大人たちもいると考えると、地方に留学する子どもたちのほうが多様な環境に身を置いているのかもしれない。
留学を目指す子どもたちの言い分
少人数の中ではチャンスが多いという見方もある。息子を島根に送り出した友人はこれを「打席が多い」と評した。もちろん、打ちに出るかどうかは子ども次第だが、その気になれば打席があり、チャレンジできる環境があるのだ。チャレンジする子どもなら大きく変わるだろう。
留学中は寮生活(学校によっては下宿)のため、自分の身の回りのことは自分でせざるをえず、それによって自立心が養われるという面もある。こうした諸々の相乗効果が誰に対しても自分の意見が言える強さにつながるのだろう。会場で会った子どもたちから留学を考える理由として「成長したい」「自分を変えたい」という声を聞いたが、それはこういうことなのではないだろうか。
好きなことをやりたいから留学したいという声も繰り返し聞いた。例えば当日、説明を求める親子が絶えなかった高校の1つに島根県の隠岐水産高校があったが、説明に参加していた子どもたちは「海が好き」「魚が好き」といたって単純だ。
「聞きに来る子たちは海や釣りが好きだからと水産高校だけに絞って来ます。水産高校自体どこにでもあるわけではなく、外から行ける学校は少ないので、大阪での説明会では島根の2校(もう1校は浜田水産高校)を回るという例も多いですね」と、白井明教頭は話す。
水産業と聞くと先行きは大丈夫かと思いがちだが、実は引く手あまたで、船舶関連資格を取得すれば給料も一般より高いのだとか。もちろん、子どもたちは、それを理由に希望しているわけではないが、好きでかつ仕事としても有望であればそれに越したことはない。
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