地方の銀行マンに降りかかっている6つの難題 地銀めぐる経営環境はかつてないほど厳しい
しかし、大胆な地方創生の推進役を担うには、地方銀行が課せられている規制は非常に多岐にわたり、また数多い。例えば、ヘッジファンドの一種である「エクイティファンド」のような役割を地方銀行も担うべきかもしれない。上場前の企業に融資して、その企業を上場させることで利益を獲得するファンドの一種だ。しかしながら、地方銀行には原則5%以内という出資規制があり、そうしたビジネスを展開できない。
金融庁は、こうした現実に対して、地方銀行による企業への出資規制を一部緩和する方針だと報道されている。原則5%までの制限を、地域活性化に取り組んでいる会社に対しては、全額出資も視野に規制緩和を進めるとしている。
そもそも原則5%という規制がおかしいのであって、もっと早く出資規制を緩和するべきだった。もともと財務の健全性維持や貸し手としての立場の悪用を防ぐための措置だが、地銀の収益を上げるためにはゆっくりしていられない現実がある 。
最近になって、地方銀行の店舗の空きスペースの外部賃貸を自由化するように、という声が上がっている。本来、銀行が自行店舗の空きスペースを外部に賃貸することは認められていない。
経営環境が厳しさを増す地方銀行にとっては、一等地に位置する銀行店舗の空きスペースを有効活用することで収益を確保しようという狙いだ。
実際にはすでに一部の地銀グループでは店舗の余剰スペースに集客施設を作り、地域の活性化や来店客増加に取り組んでいる。2017年9月に金融庁の監督指針が改正されて、公共スペースに限って規制緩和されたためだが、本来なら公共スペースに限らず自由に貸し付けることで収益を上げられるようにするべきだろう。
銀行法第12条で、銀行の他業が禁止されているためだが、時代の流れに合わせてこうした法律も大胆に見直していくのが望ましい。規制に縛られるあまり銀行が破綻しては元も子もないからだ。
戦後、金融行政は相互銀行が第2地銀へと転換し、信用金庫なども普通銀行への転換を余儀なくされてきた。その一方で、地銀にはさまざまな規制が課せられてきた。普通銀行という横並びの枠に収められて、勝手な起業ビジネスもできなければ、大胆な運用や思い切った投資もできない。
これまでの地銀は、過去に投資した債券や株式投資の利益を確定することで、何とか利益を確保し、配当をしてきた傾向が強い。2018年度では、それが利益の20%超に達しているとされる。こうした隠れた利益は、2021年度までに国内銀行の過半数が使い果たすだろう、という日銀のシミュレーションも出ている。
こうした状況に対して、「日本の国内銀行はデフォルト(債務不履行)による突然死よりも、弱い収益による緩慢な死に向かっている」と表現する海外メディアもある。
現実に日本の銀行株は、割安なレベルに低迷している。東証銀行業株価指数の配当利回りも、1973年以降で初めて4パーセントを上回ったと報道されている。配当利回りが高いということは、株価がそれだけ低いことを示している。
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