地方の銀行マンに降りかかっている6つの難題 地銀めぐる経営環境はかつてないほど厳しい
もう1つ、地方銀行が直面している問題が「フィンテック」の存在だ。
フィンテック(FinTech)とは、 金融とITの融合を意味する言葉で、キャッシュレス決済や仮想通貨を使った送金など、モバイル端末の普及やインターネット通信の高速化、大容量化によって金融業界に革命的な変化をもたらしているものだ。
このフィンテックの動きに地方銀行が対応できているか、と言うと大きな疑問がある。地方銀行がこれまで得意としてきた決済や送金、融資、資本調達といった銀行業務が、すべてフィンテックに代わられてしまう時代の変化が起きている。
銀行そのものが不要と言える時代が今すぐ目の前に来ていると言ってもいいのかもしれない。メガバンクなども、独自の仮想通貨を作ったり、スマートフォンによる送金や決済業務を急速に推進したりしているが、地方銀行まではなかなか進んでいないのが現実だ。
地域特有の課題やニーズに応じた金融サービス、経営支援といった地方銀行特有のサービスも、フィンテックに取って代わられる可能性がある。放置していたのではまさに“緩慢な死”が訪れるかもしれない。
地方銀行から地域の総合商社への転換推進へ?
こうした現実のなかで、 地方銀行が生き残っていく道はあるのか。冒頭でも紹介したように、このままの経営環境が続けば、地銀はあと10年で最終赤字に転落する銀行が6割に達する。
金融庁も、こうした事態に規制緩和に動き始めており、2019年度中にも、これまでの銀行経営の監督をする際の指針となっていた「金融検査マニュアル」を廃止して、新しい「手引書」を作る方向で動いていると報道されている。
例えば、融資先のデフォルトなどに備えて「引当金」を積む際にも、これまでのように金融検査マニュアルに基づいた横並びの積み立てではなく、個々の銀行が抱えるさざままな事情や経営環境に即した引当金の積み立てができる方針だ。
そもそも、地方銀行などはこれまでずっと都道府県単位でのビジネスしかできなかった。合併することでビジネスの範囲を拡大しても、グループ内での構成によって営業テリトリーが決まってしまう。
地方の銀行が都心に進出して自由にビジネスを展開できるような規制緩和をもっと推進していくべきだ。地方銀行が生き残っていくには、思い切った政府の規制緩和が必要なのかもしれない。むろん、スルガ銀行のような暴走を止める必要もある。自由を与える代わりに、厳しい監査を繰り返すことが重要だ。監督官庁がもっときちんと仕事をすればいいだけのことだ。
例えば、これまで禁止されてきた銀行業務以外の業務についても、金融庁は2018年3月から人材紹介業務の取り扱いを解禁した。銀行法12条との兼ね合いがどうなるのかは微妙だが、深刻な人材不足に後押しされての解禁ともいえる。
「使えない銀行員のリストラ先づくりではないのか?」という批判もあるが、監督指針改正による規制緩和の影響は大きいはずだ。こうした規制緩和をもっと積極的に行わないと、景気回復できない場合、日本の銀行業界は1990年代のように、再び連鎖破綻による金融システム危機の時代を迎えるかもしれない。
地方銀行が地域の「総合商社」的な役割を担う。そんな時代が訪れている。
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