日経平均株価はようやく15日になって「令和初」の上昇を見せたものの、「10連休」終盤に米中貿易協議が再び緊迫化、世界的に株式市場は調整局面に入った。5月10日にドナルド・トランプ大統領が予告通り関税引き上げを開始、13日には対中輸入の残り3000億ドル規模の課税引き上げ計画も発表した。
もし米中がすべての貿易品目に関税をかけたら?
筆者は、今後の米中の政治駆け引きの展開を見通す十分な知見を持っていない。
だが、台頭する中国を抑え込むアメリカの戦略は長期間にわたり続くと思われる。米民主党の多くの議員は中国に対する強硬な外交政策を支持しており、仮にトランプ大統領が2020年の選挙で敗退しても同様の状況が続くのではないか。世界各国が自由貿易の恩恵を受けてきた1990年代以降のグローバル環境は変わり、保護主義の潮流が世界各国の経済成長を抑制するのかもしれない。
もちろん、追加関税引き上げはアメリカ経済の足かせになるが、輸出依存度が高い中国経済へのダメージはより大きい。政治的にトランプ政権が現行の政策を続けることは可能だろう。
大国の保護主義政策は、長期的に世界の人々の経済的満足度を低下させる恐れがある。一方で、1、2年先程度のタイムスパンの経済情勢への悪影響については、悲観的になる必要はないと筆者は考えている。貿易モデルを使った最新のIMF(国際通貨基金)による試算では、米中がすべての貿易品目に25%の関税を課税した場合、アメリカGDPを0.3%、中国GDPを1.2%それぞれ押し下げるが、この影響は金融市場動向や各国の金融財政政策で変わってくる。
現実的には、2020年に大統領選挙を控えるトランプ政権にとって、自国の経済・株式市場などの動向が、政治的に関税政策の「手綱さばき」にも影響する。そして、アメリカ経済にとって、関税政策よりもFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策と財政政策効果がより大きい。2019年は成長下振れリスクに備えたFRBの慎重な政策姿勢が株式市場を支えると筆者は予想している。
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