「米中戦争」だけを見る投資家が見落とす本質 本当に「トランプ発言」が波乱の要因なのか?
5月5日(日)にドナルド・トランプ大統領が「2000億ドル相当の対中輸入について、10%の追加関税を25%に10日(金)から引き上げる」とツイートして以来、世界の株価は波乱に見舞われた。
このため、「トランプ大統領は、株価を押し下げるひどい大統領だ、このツイートがなければ、世界の株価は上昇し続けたに決まっているのに、何ということをしてくれたのか」という、怨嗟の声が聞こえる。
株価下落の理由の「本尊」はトランプ大統領ではない
トランプ大統領が、法人減税を打ち出すなどして、株価上昇に貢献した際は「なんと素晴らしい大統領だ」といった称賛を唱える向きも多かったと記憶している。株価が上がれば天使のように讃え、株価が下がれば悪魔のように非難するとは、投資家というのは何と身勝手なものか、と思うが、それはともかく、本当に「このツイートがなければ、世界の株価は上昇し続けたに決まっている」のだろうか。
確かに、このツイートがなければ、6日からというタイミングでは株価下落は起こらず、まだ少しの間は、株高が持続したかもしれない。しかし、足元株価下落が生じた理由の「本尊」は、トランプ発言ではなく、これまでのアメリカの株価の上昇が、過度の楽観による浮かれ過ぎであり、その反動が生じたためだと考えている。つまり、トランプ発言があろうとなかろうと、早晩世界の株価は反落に転じていたのだろうと解釈している。
また、日本が祝日の6日に世界的な株価下落が始まったため、「ほ~ら、また海外投機筋が、日本市場が休場の間に仕掛けてきた、自分の予想通りだ」としたり顔で語る向きもある。ただ、本当に仕掛けるのであれば、連休の終わり際ではなく、早々に連休初盤の4月末からだっただろう。筆者の知人(海外投資家)が、「いちいち日本株に仕掛けを入れるほど、我々は暇ではない」と語っていたが、日本で連休があったかなかったかにかかわらず、やはり世界の株価は下落に向かったと考える。
その、特にアメリカ市場中心の株価下落を引き起こした「本尊」であると筆者が考察している、「過度の楽観による浮かれ過ぎ」については、すでに当コラムで述べてきた通りだ。
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