「米中戦争」だけを見る投資家が見落とす本質 本当に「トランプ発言」が波乱の要因なのか?

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中国の経済統計ではなく、別の国の経済統計から、中国経済を推し測ってみよう。オーストラリアは中国向けの輸出の比率が高い。2018年年間では、総輸出の34%ほどが中国向けで、鉄鉱石、銅鉱石、石炭などの鉱物を中国に売っている。

このオーストラリアから中国向けの輸出額は、昨年12月に史上最高額(112億豪ドル)を記録した。その後、今年に入って、輸出額はやや減少をみせたが、高水準横ばい、といった感だ。いわば、「それほど悪くはないが、それほど良くもない」というのが、現在の中国経済の実態ではないだろうか。したがって、中国経済が著しく悪化していた、というのは言い過ぎだと思われるし、その中国経済が大きく改善する、と言うのも、楽観に過ぎると感じられる。

それ以上に、日米欧などの経済の先行きを心配した方がよい。まだアメリカの経済は悪くはないが、これまで頭打ちから低下傾向が強まっていた住宅着工や自動車販売に加えて、好調を持続していた鉱工業生産も、昨年12月をピークにじわじわと弱まり始めた。小売売り上げは3月に急増したが、昨年12月から今年2月は下振れをみせ、これまでのような一本調子の増加ではない様子が表れている。

またヨーロッパのブレクジットを巡るごたごたや、ドイツ与党の弱体化など、市場は政治要因を「織り込み済み」として達観しているが、欧州諸国の企業心理に影を落としている。企業経営が先行きの不透明感を強めれば、設備投資の縮小など、実体経済に悪影響が広がりそうだ。いずれ市場が実体経済悪にさや寄せされるのではないだろうか。

一方、日本でも、先週9日発表の4月の消費者態度指数(消費者の心理を示す)は、ごく小幅だが低下となった。2017年11月をピークとした悪化傾向に、歯止めがかかっていない。前回のコラムで述べたように、ゴールデンウィーク中の支出が増えた以上に、その後の家計の節約は大きなものとなりそうだ。さらに10月の消費増税で個人消費がどうなるかは、明らかだ。加えて、先月26日に発表された3月の鉱工業生産統計をみると、企業が生産を減らしているにもかかわらず、在庫が積み上がっているといった「最悪の展開」になりつつある。

さらに、アメリカの対外通商政策についても、市場の関心が対中に傾きすぎている。10日(金)は、茂木敏充経済財政再生相とロバート・ライトハイザーUSTR(通商代表部)代表が電話会談を行い、アメリカ側は貿易協定の早期妥結を要求したと報じられている。もちろん、アメリカの中国に対する姿勢と日本に対する姿勢は大きく異なるだろうが、市場が余りにもノーマークなだけに、日米間の通商協議は、今後の市場動向に影を落としかねない。

もし今週の株価が底固くても、その後は要注意

さて、今週以降の日本の株価だが、先週の「トランプ騒ぎ」は、目先の材料としてはそろそろ一巡してもおかしくはない。しかしその一方で、USTRは10日(金)夕に、中国からの輸入品すべてに、追加関税の発動を検討しており、詳細を13日(月)に公表するとしている。加えて、日本では企業決算の発表が続くが、前期実績、今期見通しともに、市場の期待を裏切るケースが増えてきている。アナリストも収益見通しの下方修正をする向きが優勢で、企業収益実態は当面の日本株の支えになりそうもない。

いったん日経平均株価の動きが落ち着いても、反発力は鈍く、数カ月単位の流れでは、世界の景気実態の悪化に沿った下落基調がいずれ再開しそうだ。そうしたなか、今週の日経平均株価としては、2万0900~2万1700円を予想する。2万2000円台回復は難しく、どちらかと言えば2万1000円を割り込むリスクが高い、という意味だ。

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