超崖っぷちに立つ「地銀」に欠けている視点 「Big is Excellent」の時代は終わった
裏目に出た地銀の「乗り切り策」
2017年末、銀行業界の色合いが一挙に変わった。すでに、その年の春、三井住友フィナンシャルグループがデジタル技術を駆使する国内部門の事業改革を打ち出し、その実現に向けて着実に動き始めていたが、それを急追するかのように、三菱UFJフィナンシャル・グループとみずほフィナンシャルグループが同様のデジタル化戦略を打ち出し、その効果として人員削減という収益上の「果実」を具体的な数字で公表したからだ。それぞれ、2023年までに6000人、2028年までに1万9000人という規模である。
それらを発表した両グループのトップは、戦略の意味するところは事業構造改革であると強調したものの、銀行業界ではその通りに受け止める向きは少なかった。むしろ、自然減という方式で生み出される人員削減の具体的な数字に反応し、「銀行は厳しい状況にある」ということを再確認するムードに覆われた。再確認というのは、すでに厳しさを全国の銀行員が肌身で味わっていたからである。
もっとも、「10年間で1万9000人」という長期計画に確実性があるとは思えない。わが国の経済、あるいは金融事情は10年先まで予想できるほど視界が利いているわけではない。むしろ、1年先すらも不透明と言える。それにもかかわらず、10年先まで数字を目標化し、それを信じるというのは、旧ソビエトの計画経済のような時代錯誤的な話である。
しかし、発表後、吟味されないままに人員削減の数字は踊り、銀行員は狼狽した。狼狽の心理は当事者のメガバンクだけではなく、全国の銀行員に広がった。その背景は何か。多かれ少なかれ、大半の銀行員が先行きに対して不安感を抱いていたからに違いない。
中でも各地の地域金融機関は疲弊する地元経済を見続けている。
人口・事業所数の減少に歯止めがかからず、基幹産業までも衰退傾向にある地域すらある。そこで地方銀行のなかには、地元地域から他県や首都圏へと進出し、地元経済の縮小による劣勢を挽回しようとする動きが、この数年にわたって強まっていた。
首都圏では、大企業が実施する資金借入の入札において、メガバンクが驚くような低レートで落札し、融資を実行してきたし、あるいは、相続税率の引き上げを契機にして、不動産所有者に対する相続税対策のアパート・賃貸マンション建設ローンを積極的に売り込んだ。
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