超崖っぷちに立つ「地銀」に欠けている視点 「Big is Excellent」の時代は終わった
また、運用難をカバーするために、有価証券運用を強化し、国内株式から外国債券、さらにはデリバティブで組成された仕組み商品にまで投資する動きに出たものの、残念ながら、多くのケースで損失を抱え込むという事態にもなっている。
一方、営業現場では、劣勢を挽回するために策定された営業目標が次第に現実感覚を失って、営業現場には過大な重圧になってきている。その結果として、過剰な営業目標の達成努力に消耗した若手銀行員の離職が誘発され、かえって現場力の弱体化を招くような形にすらなってきている。
離職までいかずとも、全国の地方銀行では、転職サイトに登録し、離職の準備をしている若手銀行員が少なくない。つまり、地方銀行がこの間、打ち出し続けた厳しい環境の「乗り切り策」は、決して好ましい結果をもたらしているとは言えそうもないのが現実である。
過去最大級に悪化する経営環境
しかも、乗り切り策を断行しなければならない厳しい経営環境は、これからも続く見通しにある。
地方経済の桎梏となっている人口・事業所数の減少は、よほど画期的な施策が実行されない限り、歯止めはかからないだろうし、銀行の伝統的収益といえる資金利益の源泉である利ざや(運用利回りと資金調達利回りの金利格差)の悪化が近いうちに解消する期待感はもてそうもない。
その背景にある日銀の量的緩和政策、マイナス金利政策が見直される見通しはないからである。
同政策がもたらすと期待されている物価上昇、経済の好循環という正の効果はなかなか得られず、むしろ、地方銀行が収益悪化に苦しむという負の効果、つまり、副作用のほうが着実に強くなっているが、正の効果が生まれない限り、政策が見直される可能性は低いだろう。
とすれば、これから地域金融機関は、そのような極寒の経営環境で生き抜くしかない。金融庁が繰り返し発している「持続可能なビジネスモデルの構築」である。
金融事情が土砂降りになれば、一般庶民には、金融機関を通じて、それは金利の違いなどで不公平に降り注ぐことになるが、金融機関には悪天候は平等に生じている。したがって、同じ環境のなかで自身が生き残れる道を模索するしかないが、それは前述したようなルートではなく、他のルートということになる。それが「持続可能なビジネスモデル」にほかならない。
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