不透明感強まるエネルギー情勢、三菱商事ショックの洋上風力をどうするか。村瀬・資源エネルギー庁長官に聞く、エネルギー政策の進路

──資源エネルギー庁長官に就任して3年目を迎えました。この2年間を振り返っての成果や課題、今後の抱負についてお話しください。
今年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画に書かれたことを着実に実行に移していきたい。制度の充実や事業環境整備(の必要性)についても、同エネルギー基本計画の中に盛り込んだ。年内、あるいは年度内に制度として具体化し、しっかり前に進めていきたい。
エネルギー基本計画にも反映されているが、エネルギーをめぐる国内外の情勢は大きく変化している。アメリカではトランプ政権が気候変動に関するパリ協定からの離脱を表明した。ロシアによるウクライナ侵攻など、地政学的リスクも引き続き高いままだ。(イスラエルとイランが軍事衝突したことで)中東でも一時、非常に緊張感が高まった。
こうした状況下で、わが国としてはエネルギーの安定供給およびできるかぎり安価でのエネルギー資源の確保、それと同時に地球温暖化への対応としてのカーボンニュートラルへの取り組みを併行して進めていかなければならない。
アメリカ政策転換の影響は?
──アメリカではトランプ政権発足以来、脱炭素化にとって逆風となる政策が次々と打ち出されています。日本への影響は。
わが国としてはぶれずに脱炭素化を進めていきたい。トランプ政権はパリ協定から離脱を表明したものの、GAFAに代表される世界的な大手IT企業は、脱炭素電源をのどから手が出るほど欲している。それこそ(事故を起こした2号機が所在する)スリーマイル島原発を再稼働させてまで脱炭素電源を手に入れようという動きがある。次世代の原子力技術への投資でもアメリカの企業が最も積極的に手掛けている。
再生可能エネルギーや電気自動車(EV)に関する支援では大きく後退している反面、二酸化炭素回収・貯留(CCS)などについては、バイデン前政権の支援策に手を付けず、現実的な対応をしている。この背景には化石燃料を使い続けるという国家戦略がある。そのためにCCSを進めようとしている。
パリ協定からの離脱に象徴されるように二酸化炭素(CO2)削減に何ら関心がないかのようなことを言いながらも、実際には経済社会のリアリティを踏まえた、したたかな対応をしている。わが国としてもそうしたことも念頭に対応していかなければならない。
エネルギー基本計画に盛り込んだ2040年度の電源構成見通しに示されてように、わが国としても(脱炭素がどの程度進展するかを踏まえた)複数シナリオを踏まえた現実的な対応が必要だ。当面は、液化天然ガス(LNG)をはじめとした化石燃料についても、できるだけクリーンな形ではあるが、活用していかなければエネルギーの安定供給はおぼつかない。2024年の通常国会では、水素社会推進法やCCS事業法が成立した。水素社会の実現を目指しつつ、化石燃料を使う場合にはCO2排出をできるだけ減らしていきたい。
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