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〈インタビュー〉イギリス洋上風力の第一人者が喝破、「足元の環境変化は小さなさざ波」「市場にとってのいちばんの『友人』は透明性だ」

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フーブ・デン・ロイン/Huub den Rooijen
Huub den Rooijen/クラウン・エステートの元海洋マネジングディレクター。エネルギーメジャーのシェルで長年、洋上風力発電事業に取り組んだ。イギリスで初となる洋上風力発電プロジェクトにも携わった(撮影:今井康一)

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資材費の高騰など洋上風力発電をめぐる事業環境は厳しさを増しているが、その将来性に揺るぎない自信を示すのがフーブ・デン・ロイン氏だ。
ロイン氏は、エネルギーメジャーのシェルで洋上風力発電事業の立ち上げに関わり、事業拡大に取り組んできた。その後はイギリスの広大な海域を管理するクラウン・エステートで洋上風力プロジェクトを推進してきた経験を持つ。
イギリスにおける洋上風力の第一人者の自信はどこから来るのか。話を聞いた。

新エネルギーの拡大は「強い流れ」

――昨今、洋上風力発電はインフレなど事業環境の変化を大きく受けています。コスト上昇などの課題を克服することはできるのでしょうか。

克服できる。イギリスも2023年にはいくつかの困難に直面した。洋上風力で事業者公募を行ったところ、入札がゼロだったということが起きた。しかし政府が入札制度を見直して、価格上限を引き上げ、その次の公募は成立した。

現在、エネルギー業界は電力エネルギーへと徐々に注力領域をシフトしている。EV(電気自動車)やバッテリーなどの技術開発が進展してきたからだ。技術発展が主導する形で今の変化が起こっている。とくに太陽光発電や風力発電では発電コスト低減が著しく進んだ。環境の変化を踏まえて、エネルギー企業は自らの姿を変化させようとしている。

新エネルギーの拡大という強い流れに対し、足元の事業環境の変化はいわば小さなさざ波だ。さざ波が原因で船が転覆することはない。

――さざ波ということなら、なぜシェルは洋上風力の新規開発を取りやめると発表したのでしょうか。BPも再生可能エネルギーへの投資を縮小する方針を示しています。

確かに、BPやシェルにとっては大きな変化だ。だが、洋上風力市場全体から見れば、やはりさざ波に過ぎない。

例えば2023年7月、バッテンフォール社(スウェーデンの電力大手)はイギリスの洋上風力プロジェクト(設備出力ベースで1.4ギガワット)で5億ドル超の減損損失を計上した。

だが、その数カ月後にRWE(ドイツの電力大手)がバッテンフォールからプロジェクトを買い取った。買い取ることができたのはプロジェクトが健全なものだったからだ。

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