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〈第3ラウンド獲得〉丸紅が逆風下で試される「洋上風力の先駆者」としての実力

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丸紅の洋上風力
丸紅が秋田港で商用運転をしている洋上風力(記者撮影)

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2024年12月24日、クリスマスイブの午後5時前。東京・大手町に本社を構える総合商社・丸紅の電力本部が沸き立った。国の大規模洋上風力プロジェクトを落札したと資源エネルギー庁から連絡があったのだ。

「5年近く準備をして、必ず取るとの思いでやってきたので感無量。ガッツポーズどころではなく、うおーっと叫んだくらい」。洋上風力・国内再エネ事業部の部長だった岡垣啓司氏(現在、電力・インフラ事業第四部長)は、悲願が成就した瞬間をそう振り返る。

国は洋上風力発電を重点的に進めており、これまで国内10の一般海域を「促進区域」に指定。海域ごとに公募を実施してきた。落札した発電事業者はその海域を最大30年間占有できる。

丸紅は関西電力、東京ガス、イギリスのエネルギー大手BPなど5社連合で第3ラウンドと言われる公募に臨み、山形県遊佐町沖のプロジェクトを落札した。

市場への売電価格は補助金を受け取らない「ゼロプレミアム水準」の1キロワット時当たり3円だ。FIP(フィードインプレミアム)制度のもと、より高値で電力を買ってくれる需要家の獲得を模索する。

丸紅は2021年の第1ラウンドで入札自体を見送り、第2ラウンドでは敗退していただけに、今回の落札の喜びはひとしおだ。

国内で初となる商用運転を実現

山形県沖では沖合2~5キロメートルの地点にシーメンスガメサ製の15メガワット風車を30基、モノパイル方式で建てる。総発電出力は450メガワットで、事業費は数千億円にのぼる。2027年11月から陸上工事が始まり、2030年6月の運転開始を予定する。

丸紅は秋田県の秋田港と能代港の港湾区域で国内初となる洋上風力の商用運転を2023年1月までに開始。東北電力ネットワークに1キロワット時当たり36円で売電している。

プロジェクトの総事業費は約1000億円で発電容量は140メガワット程度と小ぶりだが、建設から維持管理に至るリスク対応や供給網構築の実務経験が今回の落札にもつながったとみられる。岡垣氏は、「事業の完遂が何よりも大事。これからが本当の勝負だ」と気を引き締める。

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