
7月下旬の日米関税交渉の合意を受け、日経平均株価は一気に上昇基調が強まった。高関税が回避され、先行きの不確実性が大きく後退したからだ。
一方、金融市場の楽観をよそに植田和男総裁率いる日銀は静観を決め込んでいる。物価高はなお続いており、先行きの不確実性が後退したなら、ただちに利上げ路線を再開しても不思議ではない。
インフレファイターになるなら絶好のチャンスなのに、それでも動かない植田日銀の深層心理を読み解いてみたい。
「関税合意」でも利上げに動く気配なし
日経平均は、アメリカのトランプ大統領の仕掛けた貿易戦争で今春には一時3万円近くまで暴落した。その後、当初は強硬姿勢だったトランプ大統領の譲歩も背景に持ち直しに転じ、7月下旬の交渉合意で一気に4万2000円台に急騰した。
債券市場では「日銀も追加利上げに動きやすくなった」(銀行系証券)との見方から債券売りが強まり、長短金利も水準がやや切り上がった。
ところが、日銀は7月末の金融政策決定会合でハト派姿勢を鮮明にする。
植田総裁は会見で「追加利上げに前向きな姿勢を示す」(大手邦銀)と期待されたが、同総裁は利上げについて慎重姿勢に終始した。交渉合意による不確実性の低下は認めながらも、関税引き上げの景気下振れを懸念したのだ。
高関税を回避したものの、「もともとゼロだった関税は引き上がり、その影響を見極めたい」(日銀幹部)というわけだ。
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