「いつでも利上げできる」日銀の発信に市場は惑う 先読みする市場、決まったことしか言えないジレンマ

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日銀の利上げへの観測が強まり、長期金利が上昇している。強い賃金統計や審議委員の発言を受けた動きだが、では利上げを「いつやるか」となると市場との対話は難しくなる。

前任者と対照的な「丁寧な説明」は当初、好感されたが……(写真:尾形文繁)
※本記事は2025年2月12日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

日銀は1月24日の金融政策決定会合で追加利上げを決めた。金融市場は「完全に織り込んでいた」(大手邦銀)とされ、為替や株価などに波乱はなかった。

波風立てずに利上げできたことは、それだけ見ると「市場との対話」に成功したかのようだ。だが、日銀の事前の対話は、利上げするのかしないかのブレがかなり大きく、金融市場は右往左往を余儀なくされた。

なぜ、利上げに向けた日銀の対話が揺れ動いてしまうのかを読み解いてみたい。

年末のハト派から年明けのタカ派に急旋回

まず、今回の利上げに向けた情報発信の軌跡を振り返ってみる。

昨年12月初め、植田和男総裁は一部メディアのインタビーに応じた。内容自体は必ずしも利上げに前傾するものではなかったが、円安を警戒する発言が「利上げに前向き」(外資系ファンド)と解釈され、同月18、19日の決定会合での利上げ観測を広げた。これに対し、日銀は火消しに動き、各メディアからは利上げ見送りの観測報道が相次いだ。

問題は、12月19日に利上げを見送った際の植田総裁の会見だった。為替市場では、円安が進行しており、1月下旬の決定会合に向けて「利上げの可能性をほのめかすだろう」(同)と期待された。ところが、植田総裁は春闘に向けた賃金動向やトランプ政権の経済運営の影響などの見極めが必要との認識を示した。

いずれの見極めも時間がかかるため、1月利上げの観測は大幅に後退。「春まで利上げはない」(債券ファンドマネージャー)との見方が支配的となった。

そして、年明け14日、日銀は利上げに向けた情報発信を突如開始した。同日、神奈川県金融経済懇談会で挨拶した氷見野良三副総裁は「(今度の決定会合で)利上げを議論する」と表明。さらに15日には植田総裁が全国地方銀行協会での挨拶で、同様の発言を行った。これにより、1月利上げの織り込みが急速に進んだ。

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