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自治体同士の税金争奪ゼロサムゲームと化したふるさと納税。ルールを犯してでもカネを集めたほうが「賢明」にすら見える状況になっている

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自治体にとってふるさと納税は逃れられないゼロサムゲームとなっている

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ふるさと納税の規模が年1兆円を超え、自治体間での「税」の奪い合いが激化している。肉、果物、コメ、旅行券……。多種多様な返礼品を紹介するポータルサイトが業界で圧倒的な力を持ち、自治体職員には疲弊の色が見られる。ふるさと納税に伴うポイント付与が10月から事実上禁じられるのを前に、業界ウォッチャーの平田英明・法政大経営学部教授が実情をリポートする。
【配信予定】
9月19日(金)ふるさと納税を促す撒き餌「返礼金」の威力
9月20日(土)地方同士の格差をふるさと納税が広げている現実
9月21日(日)ふるさと納税の新データを全記者が誤読した理由

ある自治体のふるさと納税担当者の朝は、パソコン画面に表示される返礼品の取引データを確認することから始まる。

数字は、ふるさと納税ポータルサイト(以下、ポータル)での返礼品の「動き」を表す。「商機」を逃さぬよう、人気がある返礼品の在庫を追加したり、仲介サイト間でより返礼品の動きが良いサイトへと在庫を移動させたりする。その姿はさながら多忙なECサイトの運営業者だ。

ふるさと納税の総額は毎年1000億円以上の成長を続けている――。こう書くと、あたかもふるさと納税がマクロ的な経済成長の起爆剤になっているかのようだが、実態は異なる。「ミクロ的な悲喜こもごもの活性剤になっている」とみたほうがいい。

ふるさと納税は自治体間で住民税を移転させる仕組みにすぎず、その数字の伸びは、自治体同士のパイの奪い合い激化のバロメーターだといえる。

目標額達成プレッシャーにさらされる公務員たち

パイの奪い合いが激化し、各自治体では、前年を上回る獲得目標額を設定することがもはや当たり前となっている。そして、目標達成のために少しでも返礼品を目立たせようと、契約するポータルの数を増やし、「顧客」(寄付者)のニーズに合う返礼品のラインアップ強化をなりふり構わず進めている。制度上、ふるさと納税は寄付にあたるが、その実態には寄付の面影は薄い。

担当職員は目標額達成のプレッシャーにさらされながら、複雑化する在庫マネジメントをこなす。自治体職員としてはかなり特異な能力が求められ、担当期間は長期化しやすい。

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