地方の銀行マンに降りかかっている6つの難題 地銀めぐる経営環境はかつてないほど厳しい

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地方銀行が持つ日本国債も2019年2月時点で約20兆円となり、アベノミクス以前に比べて半分に減少している。投資用不動産の融資で不正が発覚し赤字転落したスルガ銀行を除くと、地銀の連結純利益の合計はほぼ横ばい。それでも、2期連続で1兆円を割るなど低水準が続いている。

本来、地方銀行の本業は、集めた預金を企業の運用資金や不動産ローンの原資として使い、その利ザヤで稼ぐことだ。その本業が、地方経済の衰退などによって難しくなり、もう一方の収益基盤だった国債などの有価証券でも、儲けを減らしている。それが、現在の地方銀行の姿と言っていい。

こうした現象は、株式市場に上場している地方銀行に限らない。第2地銀や信用金庫といった中小金融機関にも同じことが言える。地方経済を支えてきた金融機関が、ここに来て構造的な経営不振に苦しんでいるわけだ。

変化する地銀運営、改革推進中だが…

地方銀行自身もさまざまな努力を続けている。

例えば、日本郵政と地方銀行は連携して、地銀の口座を持っている人向けに住所変更などの手続きができる窓口を郵便局に設置している。地銀の店舗運営コストなどを引き下げる方法の1つだ。

北海道銀行など地銀25行は、すでに住所・氏名の変更やキャッシュカードや通帳の再発行、通帳の記帳繰り越しといった業務を郵便局と提携している。地方出身で地銀に口座を持っていて、近くに支店がないような人に便宜を図るためだ。

同様に、店舗改革を実施して書類の電子化などを進めている地銀も数多い。群馬銀行など地銀7行は、人工知能(AI)を使って、行内のデジタル文書を検索できるシステム化を共同出資で開発をスタートさせている。「フィンクロス・パートナーシップ」と呼ばれる地銀7行による連携協定だ。

このほかにも、地方銀行によるさまざまな収益確保や店舗改革も行われている。滋賀銀行は用件別に窓口を分類して、入出金や振り込みをスピーディーに処理するシステムを整えた。京都銀行も、新店舗を次世代型の軽量店舗と位置付けて金庫室を排除して、その分接客スペースを広げて入出金や振り込みがロビーでできるセミセルフ端末を導入した。

さらに、ほけんの窓口グループなどと連携して、銀行業務以外の顧客も集客できるようなシステムを整える地銀も増えている。

こうした地銀の経営努力にもかかわらず、いまや地銀の7割が減益もしくは赤字に陥っている。やはり、アベノミクスのマイナス金利や大規模緩和の影響が大きく、さらに規制緩和が進まない現実があると考えるのが自然だ。

そもそも、現在の地銀が抱える課題には何があるのか。簡単にまとめてみたい。

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