「パワハラ防止法」成立を手放しで喜べないワケ 「下から上」のハラスメントにも要注意

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ストレスチェックの結果をみても、高ストレス者の多くが職場での話し相手や相談相手がいない傾向があります。そういった背景のなか、職場で気軽に話ができる相手がいることや、ささいなことでも相談できる環境づくりが望まれます。日常的なやり取りの中で信頼関係を育んでいくことが、パワハラ防止の何よりも重要なポイントになるのです。

人は、わからないことや知らないことに不安や恐怖を感じやすく、それは対人関係においても同じです。

相手が何を考えているかわからないと、相手に対しての緊張感が増し、いらぬ臆測を招くことにもつながります。

法律化でさらに進む人間関係の悪化の可能性も

実際に、メンタル不調になられた方のカウンセリングをしていると、上司への不満が語られることが多いのですが、そのなかで、相談者と上司との関係性の希薄を感じることがたびたびあります。

具体的には、上司に自分の思いを「受け止めてもらえなかった」そもそも「話をする時間を持てない」というような訴えです。そのような関係性が続くと、「どうせ言っても無駄」「嫌われているのかも?」などという悪循環に陥り、ささいな言動にも「パワハラだ!」と感じやすくなります。

また、問題が起こった場合に、上司側の話を聞くことも多いのですが、上司の方も相手の動向をうかがって、余計なことを言ったり関わったりすることでおせっかいだと思われないか、嫌がられないかと神経質になるあまりに「あまり深く関わらないようにしている」と距離を置いている傾向がみられます。

法律化されてしまうと、こういった傾向がより強くなってしまうのではないかと不安がよぎります。なぜなら、法制化されることで、当然のことながらパワハラに関する教育や研修が、今後ますます増えていくことが考えられるからです。

今までもそうでしたが、禁止事項の羅列や不適切な事例、もしくは裁判例を引き合いに出して学習させるような方針がより一層のパワハラの温床を広げかねないのです。こんなささいなことで問題になったらかなわないというような危機意識を生み、結果的に「関わりたくない」と思わせてしまっては本末転倒です。そもそも、関係性の悪化がどうして起こったかを学ぶ必要があります。

パワハラを防いでいくためには、単なる禁止事項の徹底や、言動を制限することではなく、よりよい関係性を生むような関係改善や構築のスキルが必要なのです。

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