広島の「平和活動」に感じる微妙な矛盾と残念さ

原爆と核兵器廃絶は別問題なのか

広島の平和活動の中で、「伝える」の次によく耳にする言葉は「継承する」だろう。被爆者たちが老いるにつれ、核兵器が使われると実際に何が起きるのかを世界に伝えていかなければならないとのプレッシャーが、若い世代に増している。

しかし、広島の平和活動には、厳然とした世代ギャップがある。イベント参加者で最も多いのは退職者たちで、次いで高校生や大学生だ。限られた数の市民社会団体は往々にして似たような組成で、経済的に自律した年輩スタッフと、学生インターンから成っている。20代、30代、40代の現役世代はみんなどこへいってしまったのか。

「ほとんどの場合、広島の平和関連の仕事で生計をたてるのは無理なので、市民社会が発達することはありません」。大学非常勤講師であり、元「プロジェクト・ナウ」のメンバーの黒住奏氏は言う。若い人々が、原爆や核兵器廃絶関連の仕事をすることに対して完全に無関心なわけではない。ただ、十分な経済支援がないのだ。フルタイムやパートタイムで仕事をしながらボランティアに携わる人々もいるが、多くはやがてもっと収入のいい仕事を探すことになるか、燃え尽き症候群に陥る。

簡単ではない「継承」

世代ギャップを埋める若いメンバーたちの数が不足し、原爆の理解の仕方や語り方が分岐し続けている。「被爆者たちは、若い人々に自分たちが実際に見た広島の地獄をイメージしてほしいと思っています。でも若い人々にそれはできない。若い人たちはまた別の方法で理解しようとしています」と福岡氏は言う。

「若い人々は、年老いた世代の気持ちを思い遣って『継承』について語ります。でも、被爆者たちは時にそれを好ましく思わないことがあります。青少年にスポットライトがあたるのが。原爆を体験したのは被爆者たちなのであって、彼らはまだ亡くなってはいないのですから」。しかし、若い人たちは時に、先人たちに対する敬意と、自分たちのやり方で参加したいという欲求とのはざまに立っている。

原爆や核兵器問題にはまた、イメージの問題も絡む。私が海外からの訪問者に見た反応と同じく、1945年の原爆に大きく正面から焦点を当てることで、時に現地の人々を力づけたり活力を与えたりするのを損なう結果となってしまうことがある。例えば、広島市内の学校で毎年行われる平和教育の授業では、原爆を怖いと感じ、それについて学びたくないとの思いになる生徒もいる。

皮肉にも高校を卒業する頃までに、「子どもたちはその話に過度にさらされるため、原爆はあまりにも普通のことになってしまう」と黒住氏は語る。核兵器を、現実問題に直結した興味を引く社会問題としてとらえる代わりに、彼らの中には、原爆に伴う重苦しいイメージのために「平和アレルギー」を起こす者もいる。

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