脱北元公使が明かす「日朝平壌宣言」の舞台裏

北朝鮮は100億ドルのために拉致を認めた

2002年9月、初の首脳会談を終え、笑みを浮かべ握手する金正日総書記と小泉純一郎首相=平壌市内の百花園迎賓館。この交渉の内幕が脱北した元公使の手記『3階書記室の暗号 太永浩の証言』に描かれている(共同)

6月12日にシンガポールで史上初の米朝首脳会談が予定されている。北朝鮮は、米韓軍事演習などを理由に会談の再検討を匂わせているが、5月21日時点では中止ということにはなっていない。

首脳会談の主なテーマは北朝鮮の核問題ではあるが、ドナルド・トランプ米大統領は、会談の中で「日本人拉致問題を取り上げる」と約束している。今度こそ、拉致問題の解決に向けた動きにつながるのだろうか。拉致被害者家族の期待も高まっている。

太永浩元駐英北朝鮮公使の証言

そんな中、韓国で1冊の本が出版された。2016年に脱北して韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使が書いた手記だ。5月15日に発売されたばかりのこの本は『3階書記室の暗号 太永浩の証言』と題されている。

「3階書記室」とは、北朝鮮の住民が全く知らない秘密の組織で、金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長を補佐する「書記室」が使う3階建ての建物全体を指す。

『3階書記室の暗号 太永浩の証言』(筆者撮影)

「中央党の幹部も勝手に近づけない、完全な立入禁止区域で、金正日、金正恩父子を神格化して世襲統治を維持するための組織だ」(同書より)

太氏は欧州で長く外交官として勤めた経験を基に、北朝鮮の外交政策や、金正恩党委員長の発言、行動を描いている。筆者はこの本を手に入れて、読んでみた。542ページもあり、太氏の半生記にもかなりのページが割かれている。

筆者の目にとまったのは、2002年9月17日に、小泉純一郎首相が平壌を訪問して行った日朝首脳会談の内幕だ。

5ページほどの短い記述だが、小泉首相とテーブルを挟んで座った金正日総書記の心境が書かれており、大変興味深いものである。

それは日朝の首脳が直接会って解決を約束しあったのに、なぜ拉致問題が停滞したかを伝える内容だ。以下、同書から引用しながらその内容を紹介しよう。

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