脱北元公使が明かす「日朝平壌宣言」の舞台裏 北朝鮮は100億ドルのために拉致を認めた

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「首領様(金総書記の父、金日成主席のこと)でさえ、生前日本から(植民地支配に関する)謝罪を受けることはできなかった。日本の首相から公式な謝罪を引き出したのだ。大丈夫だ」

姜第1外務次官は涙を流し、「日本の首相から反省と謝罪を引き出すことは、朴正煕(1963年から1979年まで韓国の大統領を務め、日本との国交正常化を通じ、高度経済成長を実現した)でさえできなかったことです。日本は(北朝鮮に対して)経済支援方式での戦後補償を約束しました。少なくとも100億ドルは入ってきます」と答えたという。

なぜ100億ドルなのかの説明はないが、この数字は、当時広く噂になっていた。韓国が1965年に受けた経済支援の額を当時のレートで換算したものだろう。日本円では約1兆円となる。

100億ドルのために、自尊心を曲げ、日本の首相に謝罪したのだ。太氏は、この数字を聞いた時の感情について「胸が高鳴った。外務省の同僚たちも、興奮した様子だった。巨額で、重要なカネだと話し合った」という。北朝鮮の経済発展は、すぐ目の前にあるような気がしていた。

ところがその喜びは、あっさり潰えてしまう。

遺骨は「偽物と知って送った訳ではない」

金総書記が拉致を認めたことで日本政府の姿勢は硬化し、拉致生存者5人は、一時帰国したまま北朝鮮に戻らなかった。13歳で新潟から拉致された橫田めぐみさんの遺骨が、日本政府に渡された後「偽物」と認定され、騒ぎが大きくなったためだ。

北朝鮮外務省の中では「本物が偽物か分からない骨をなぜ日本に送ったのか」と批判の声がでた。これに対し、日本担当の外交官は、「めぐみさんに関する記録がすでになかった。しかたなく病院関係者が、遺体を埋めたあたりを発掘して見つけた骨を送った」と説明したという。「偽物と知って送った訳ではない」という説明だった。

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