脱北元公使が明かす「日朝平壌宣言」の舞台裏 北朝鮮は100億ドルのために拉致を認めた

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この難局を切り抜けるため北朝鮮側は、日本との関係改善によって支援を受けられるように、と考えた。そして、日本を通じて、米国からの軍事的圧力を交わそうとも考えた。これこそが、日朝首脳会談に応じた目的でもあった。

そう説明したあと姜第1外務次官は、「小泉は日本人の拉致問題の解決なしには、一歩も前に進めないという立場にこだわった。この問題でわれわれが譲歩すれば、日本側も譲歩するという説明を受けた」というのだ。

意外だった小泉首相の強硬姿勢

姜第1外務次官によれば、小泉の強硬姿勢は、金正日総書記にも意外だった。会談前には、自分から拉致問題に言及することは避け、会談の合意文にそれとなく拉致問題を書き込む妥協案を胸に抱いていたというが、経済支援を得るために、仕方なく拉致問題に自分から言及することになったのだという。

この時、金総書記は「自分も最近になって(拉致が北朝鮮による犯行であることを)知った。一部の盲動分子がやったことだ。今後は、こんなことはないだろう」と語った。それまでは無関係として否定していた拉致を、自国の犯罪行為と認め、正式に謝罪したのだ。

この説明を聞いた太氏は、「日本チョッパリ(豚の足、日本人への蔑称)に、わが国の指導者が謝罪するなど、想像もできないことだった」と不快げに書いている。

姜第1外務次官は、この言葉を聞いたあと、金総書記に近づいて両手を合わせて頭を深く下げたという。

「将軍さま、外交戦士(外交官のこと)として本当に申し訳ありません。将軍さまに拉致問題を論議させるつもりはありませんでした。われわれが処理するべき問題でした。そうできずに申し訳ありません。私たちの罪です」(210ページ)

金総書記は、深く謝罪する姜第1外務次官に対して、次のように慰めの言葉を掛けたという。

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