脱北元公使が明かす「日朝平壌宣言」の舞台裏 北朝鮮は100億ドルのために拉致を認めた

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太氏は9月17日の首脳会談後に発表され、朝鮮労働党の機関紙である労働新聞に掲載された「日朝平壌宣言」を読んだ。

そこには「双方は、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注する」「双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した」「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した」とあった。

太氏は最後の「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」という部分に注目したという。はっきりは書かれていないものの、この表現を見る限り、金正日総書記が、日本人の拉致問題を認めたと読めるからだ。

1990年代に100万人単位の餓死者

当時、太氏が所属する北朝鮮外務省内では、この宣言をめぐる分析や、今後の措置についてざわついていたという。

このため、首脳会談に同席していた外交の司令塔、姜錫柱・第1外務次官(2016年5月死去)が、職員全員に対して説明を行うことになった。

『3階書記室』によれば、その説明はこうだった。

「小泉の平壌訪問を前にして、会談内容をめぐり、何回か協議したが意見がまとまらない部分があった」

1990年代、北朝鮮は大規模な食糧危機に見舞われ、100万人単位の餓死者が出たとされる。いまでも「苦難の行軍」と呼ばれる時期だ。

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