広島の「平和活動」に感じる微妙な矛盾と残念さ

原爆と核兵器廃絶は別問題なのか

【2019年6月12日15時21分追記】当記事は英語で取材、執筆されており、初出時、福岡氏のコメントに誤訳がありました。下記のように修正いたしました。

力強い言い回しを駆使しながらあまり結果が出ていないのは、政治家たちだけに限らない。元ユース非核特使の福岡奈織氏によれば、「被爆者も含めて広島の人々は原爆体験を語りますが、その際必ずしも確固たる成果を思い描けているわけではありません。聞き手からは感情的な反応が返ってきますが、それは必ずしも社会的な変化を生むことにはつながっていません」。

私はこの現象を直に目撃している。現地のNPOでインターンをしていた頃、海外からの訪問者たちに説明したり街を案内したりするさまざまな機会があった。彼らは敬意を払いながら平和記念資料館を見て回り、被爆者たちの証言に耳を傾けた。あるとき、終日ツアーの最後に、私の上司がアメリカから訪れた大学生グループにその日に学んだ内容についての感想を求めた。その多くが、「そうですね、広島に起きたことは悲しいことですが、核兵器は残念ながら存在しているのです」というようなことを言った。

「伝えること」に感じる限界

もちろん誰であれ――とくに核兵器は自分たちの安全を守るために不可欠だとつねに教えられてきた者たちにとっては――数時間でその思考をがらりと変えるのは難しい。しかし、その学生たちは私に、訪問者たちに提示された「広島」は必ずしも、核兵器廃絶が可能であると、ましてや一般の人たちがその実現に協力できると感じさせるものではない、と気がつかせた。

被爆者たちの証言は間違いなく力を持つ。目下、世界で起きている軍縮の波は、核兵器が招く人道的被害に焦点を当てているが、身をもって体験している被爆者より鮮明にこれについて語れる人たちはいない。しかし、証言だけが核廃絶の「ツール」ではない。

TPNWの発効を支援した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が2017年にノーベル平和賞を受賞した後、ICANのさまざまなスタッフや支持者たちが広島を訪れ、現地組織のイベントやネットワークで話をした。核兵器に対する感情ではなく論理的な議論に触れられただけでなく、ICANが活力に満ちたキャンペーンを推し進めるためにいかに現実的な戦略――ロビー活動や大企業に対する核関連事業の撤退要請、前向きなイベントの開催、ネットで目を引き続ける努力――を駆使したかを知り、力を与えられた思いだった。

その6カ月ほど後に、再びアメリカの大学生と教授たちのグループに広島市内を案内する機会を得た私は、現在のグローバルな核廃絶運動についての短い話でその日を締め括ろうとした。学生たちが私と同レベルの積極性を共有していたかどうかは別として、彼らは関心を持ったように見え、多くの質問をしてきた。

しかし、後で教授の1人が、私が「自分の見解」についてこれほどあからさまに語ったことについて驚きを表明した。おそらく、TPNWやICANの活動を説明するのは、政治的姿勢を示す行為なのだといいたいのだろう。その教授が、自分の生徒たちには1945年の認識から逸脱することなく広島旅行をして欲しいと期待していたのは明らかだった。

もし人々が歴史の教訓のみを期待して広島を訪れるのなら、そしてそれが現地の組織が提供できるすべてだとするならば、原爆と2019年における核兵器問題がそれぞれ独立した議論となるのは不思議なことではない。しきりに繰り返される「私たちができるのは、伝えること」は、広島がその目標を達成するのに十分なのだろうか。

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