西欧優位の起源となった「世界史の大分岐点」

気候変動と生態環境で見るアジア史

前回に引き続き、モンゴル帝国の衰退から科学や産業の要を築いた近代の世界史を岡本隆司氏がひもときます(写真:Anson/iStock)
前回で見たように、モンゴル帝国の建設と繁栄の前提に温暖化があった。では、その前提が崩れたとき、歴史はどう動いたのか。
14世紀と17世紀に訪れた2度の世界史的な危機の影響について、『教養としての世界史の学び方』(共編著)を上梓した岡本隆司氏が解説する。

寒冷化の再来と世界史の変貌

14世紀以降、地球は寒冷化に向かいます。そこで起こった数々の混乱は、ヨーロッパの歴史学において「14世紀の危機」と呼ばれている現象で、とくに「黒死病(ペスト)」が有名です。ヨーロッパばかりではありません。モンゴルが被った影響も大きく、これで帝国は解体、消滅しました。ユーラシアの統合はおろか、西アジア・中央アジア・東アジアそれぞれの政権による地域内部の統治さえ、維持できなくなるのです。

『教養としての世界史の学び方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

寒冷化で痛めつけられた世界のなかでも、中央アジアの立ち直りは早かったようで、ティムール朝が興起します。ティムール朝はモンゴル帝国の統治システムをほとんどそのまま援用し、遊牧民と商業民が分業しながらタイアップし、繁栄を誇りました。

ところがこの政権も短命で、15世紀に北方の遊牧勢力に滅ぼされると、中央アジアを包含する巨大なユーラシア統合の時代は、終焉を迎えます。人類の歴史上でも、これがほぼ最後となりました。

遊牧民・商業民・農耕民の分業と提携で広域統合を果たすのがモンゴル帝国・ティムール朝のシステムだとすると、16世紀以降、その後継政権に相当するのはオスマン帝国・イランのサファヴィー朝・インドのムガール朝などです。やや遅れて、17世紀の東アジアの清朝を含めることも可能でしょう。

いずれも遊牧起源の人々を中心に勃興した政権ですが、複数の集団を支配する君主は、多数派を占めるには至っていません。オスマン帝国はトルコ系の君主を中心に、ギリシア人・アラブ人を統治しましたし、サファヴィー朝もトルコ系遊牧民が大多数のイラン人を支配し、ムガール朝はペルシア=トルコ系のムスリムがヒンドゥーの人々を治める形でした。

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