実は「温暖化の産物」だったモンゴル巨大帝国 「気候変動と生態環境」で捉えるアジア史
『疫病と世界史』の意義と限界
「グローバル・ヒストリー」を世に知らしめたのは、何といっても、マクニールの『疫病と世界史』という名著です。国境などにかかわらず、人類に脅威を与えてきたものは、感染症にしくはありません。目前にもあてはまることであって、そこに着眼して世界史を書き改めた『疫病と世界史』は、ほんとうに興味深い著作でした。
それでも、まったく疑問がないわけではありません。疫病・感染症は確かに恐ろしいものです。ですが、その病症・病原体やウィルスなどを考えるのは、むしろ医学の範疇に属します。
日常に忙しく、知見も乏しい一般の人が、ウィルスや免疫のことまで考えながら暮らせるはずはありません。われわれが日々感じ、思うのは、気候・気温や生活習慣の変化です。寒ければ病気を心配し、暖かくなれば安心します。労働や食事が大きく健康を左右するのは、言わずもがなでしょう。
病気はウィルスの作用で起こるのだ、と言われます。確かに医学的な説明は、そうなるに違いありません。しかしウィルスは大気中に、いつも数知れず漂っているのに、病気がはやる時期とそうでない時期があります。
寒くなればインフルエンザが流行しますが、夏にそうなるのはめずらしいでしょう。病気にかかりやすい人もいれば、そうでない人もいます。偏食や疲労、ないしは体質によることが少なくありません。
それなら、病原体・ウィルスは誰にでもあてはまる普遍的な条件であり、共通因数として捨象できます。病気の直接的な原因は、変化する気象や人それぞれの生活・身体であると見るほうが、われわれにはわかりやすい、常識的な考え方だといえます。
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