2区のコースは23.2kmと長く、16km付近の権太坂とラスト3kmに厳しい上り坂があり、攻略が難しいコースだ。前半から飛ばすと、最後の3kmでまったく動かなくなる。フラットの20kmコースを想定していると、快走するのは難しい。トラックで活躍する選手はスピードを武器とするランナーが多く、2区のように後半に厳しい上り坂のあるコースを征服するには、ある程度の距離を走り込むことになる。その対策が故障などでできなかった選手や、大迫のようにスピードにこだわってきた選手にとって、2区は歓迎すべきコースではないのだ。
5区が最長区間になって戦術が変わる
もうひとつ戦術的な問題もある。82回大会(2006年)から4区と5区の距離が変更となり、4区が21.0kmから唯一20kmを切る18.5kmのショート区間に。5区が20.9kmから最長となる23.4kmに距離が延びたことが「花の2区」にも影響をもたらしている。
山上り区間である5区では、「山の神」と呼ばれた今井正人(順大OB)や柏原竜二(東洋大OB)のように、ひとりでレースをひっくり返してしまう強烈なヒルクライマーが現れ、各大学はその対策を余儀なくされた。上りは“適性”の部分が大きく、距離が延びたことで、これまで以上の“走力”も要求されるようになった。その両方を備える選手を育成するのは難しく、多くの大学は「山の神」たちに“生贄”を差し出すことになる。
その代わりに5区の前に少しでも貯金を作りたいという意識が働き、3区にエース級の選手たちを配置することが多くなった。先ほど名前を挙げた竹澤、上野、佐藤らの主戦場も3区だった。ちなみに選手の中で5区の人気は真っ二つに分かれている。
今回の箱根駅伝に出場予定の注目選手で2区を熱望しているのは村山謙太(駒澤大学)くらい。全日本大学駅伝優勝の駒大勢でいえば、窪田忍と中村匠吾は「任されるなら何区でも」というスタンスだ。V奪還を狙う東洋大学が誇るツインエースのうち、4年連続2区が濃厚の兄・設楽啓太は「個人的に走りたいのは6区」だと言い、弟の設楽悠太は「3区か7区がいい」と話している。
前回優勝の日本体育大学は、その立役者となった服部翔大の2年連続5区が有力だが、本人は特に5区を希望しているわけではない。その一方で、2年生エースの山中秀仁は「5区」に挑戦したい気持ちを持っている。区間配置は選手たちの希望どおりになるものではないが、2区や5区のエース区間を志願する選手は10年ほど前と比べて明らかに少なくなっている。
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