変わりゆく「箱根駅伝」の“現在地点” 熱戦を控える選手たちのクールな本音

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箱根は目的地か、通過地点か

真夏の甲子園でヒーローになってもプロで活躍できない野球選手がいるように、箱根駅伝で燃え尽きてしまうランナーもいる。東海大学時代に箱根駅伝で3年連続の区間新。日本選手権1万mで3連覇を果たして、テグ世界陸上、ロンドン五輪、モスクワ世界陸上と3大会連続で日本代表となった佐藤悠基(日清食品グループ)はこう話している。

「箱根駅伝がすべてだと思っている選手は、箱根までじゃないでしょうか。箱根は大会の中のひとつという位置づけで、もっと先があると思って臨めば、その後も活躍できると思います。箱根の練習をしておけば、1万mは走れますし、本格的にマラソン練習をやるときの基礎にもなる。箱根をうまく活用できるか。ただ箱根、箱根と言われるがまま何も考えずに練習しているだけだと、その後が続かない。僕は箱根を利用して強くなれたと思いますし、同時に箱根がすべてではなかった。意識の問題ですね。そういう風に考える選手が多くなってくれば、『箱根から世界へ』という言葉が現実のものになると思います」

箱根ランナーのほとんどが大学卒業後、実業団チームに進む。しかし、学生時代の記録を超えることができずに、早々と競技を終える選手も少なくない。その反対に少数派ではあるが、大学卒業後は一般企業に進む選手もいる。田中鴻佑(早大)もそのひとりだ。大迫が不在時には“キャプテン代理”としてチームを引っ張ってきた田中だが、箱根駅伝を最後に“選手”としてのキャリアを終える。

「大学で陸上をやめるのは、身近に大迫という選手がいたことが大きいですね。大迫のように世界を目指す選手がいる一方で、僕の中では箱根を最大の目標に定めてしまった。卒業後は惰性で競技を続けるより、自分自身がトップを目指せる新たな場所でやっていきたいという思いが強くなりました」

田中は大手総合商社に内定しており、春からは新たな人生を進むことになる。正月の晴れ舞台を走る学生ランナーたちの「箱根」はどこにあるのか。漫画のように人生はクライマックスで終わらない。箱根駅伝を“通過”してどう生きていくべきなのか。箱根を走った者として、後輩たちには悔いのない人生を歩んでもらいたいと思う。

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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