ダンスを仕事にした33歳「FISHBOY」の流儀 才能を開花させる人とさせない人の差とは

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テクノロジーが発達し、誰もが動画で学べるようになった一方で、懸念もあるとFISHBOYさんは続ける。

「ダンスはスポーツであり、アートであると思っています。中途半端にまねするだけだと、世界的にダンスが似通っていって面白くなくなってしまいます。審査員をしていると、実際にその傾向を強く感じることがあります」

才能とは、努力の積み重ねである

上手な人の動作を模倣すること自体は悪くないが、コピーレベルに止まらないためには何が必要なのだろうか。

「私はある沖縄の方のダンスが好きで、その方のビデオばかり何度も繰り返して観ていました。よくテレビでモノマネ芸人がご本人にあいさつをしに行くシーンがありますが、それと同じように、憧れていた方に『申し訳ございません。最近踊りが似すぎていると言われておりまして』と話したところ、その方から意外な言葉が返ってきました。

『どんどんまねしてください。まねて、まねて徹底的にまねしていると、そこから我(が)が出てきますから』と。そのとき、自分だけのオリジナリティーを生み出すためには、突拍子もないインプットを行い、自分なりに昇華していくことが必要なのだと教わりました」

ほかと違う表現をしようとする際、バレエやコンテンポラリーなど、隣の畑をのぞいてみるというのはよくあることだ。しかし、FISHBOYさんはダンスというカテゴリー自体から飛び出し、アミューズメントパークのロボットやブリキの人形や、動物園のゴリラや鳥の動きを完コピーしながら独自のダンスを生み出していった。

動物園へ行きゴリラや鳥を観察して、その動きをダンスに取り入れているそうだ(撮影:今井康一)

結果を出している人の話を聞くと、結果を出せない人は必ずと言っていいほど、「自分には才能がないから」と口をそろえる。

しかし、FISHBOYさんは天賦の才能がある人はごくまれな存在であり、才能は自らの力によって蓄積することができるものだと話す。

「私は、才能とは知らないうちに積み重ねた努力のことだと思っています。例えば、野球をしていた人がサッカーのキーパーで日本代表になるということがあります。一見つながりがないように思えることであっても、あることに対する努力が別の素養をつくっています。

私の場合も、幼少期にサッカーやムーンウォークの練習をしていたことが、現在のダンスにつながっているように思います。知らないうちに積み重ねてきた努力が何かに向いているとわかった瞬間、それは才能になると思うのです」

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