覚悟の塊でタブーに挑む
2023年5月、ゴールデンウィークが半ばに差し掛かると、にわかにネットがざわつきはじめた。「『サンクチュアリ』を観たか」「まだなら、絶対に観たほうがいい」と。筆者も流行に遅れをとるまいと第1話を観たが最後、全8話を一気見し、気がついたときには、江口監督にインタビュー打診のメッセージを送っていた。
なぜ江口監督と制作チームは『サンクチュアリ -聖域-』を世界的なヒットに導くことができたのだろうか。その理由を監督に聞いた(以下、「」内すべて江口監督)。
「この作品は、いろいろな覚悟がなければ実現しなかったと思います。学生相撲を描く映画であれば、体格をそこまでつくる必要はありません。しかし、われわれは『大相撲』というプロの世界をつくろうとしました。これまで誰も大相撲を舞台にした作品を撮ってこなかった一番の理由は、その体格の人たちで芝居をつくることが不可能だったからです。
相撲取りの体格があって、相撲ができて、なおかつ演技ができる。そんなことは不可能だと思いますよね。それを実現させるためにいろいろな議論や試行錯誤をした結果、今回はすでに売れている俳優を真ん中(主役)にはしませんでした。
そうなると、日本のエンタメ業界の常識では、そんな作品は売れっこないと言われてしまう。なおかつ、原作がないものも売れっこないと言われる。『サンクチュアリ』の制作に際しては、最初からこの2つのタブーを破っていく覚悟を持ちました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら