――音楽プロデューサーを亀田誠治さんが担当しています。資料では「今回は小泉監督が何度もダメ出しをしてくれたおかげで、楽曲が格段によくなりました」と亀田さんがコメントしていましたが、あれだけのキャリアの人に対しても、遠慮なくダメ出しできるのはすばらしいことだと思ったのですが。
今になって冷静に考えれば、ムチャクチャでしたね。失礼ですよね(笑)。亀田さんの人柄があってこそです。
――亀田さんとは主にどういったやり取りがあったのですか?
映画に登場するバンドがどういう音楽性を持っているか、ですね。たとえば劇中に登場する人気バンド「CRUDE PLAY」の音楽性というものも、いろいろな可能性が考えられたからです。マンガだと音は聞こえてこないわけですから。ただ、すごくメジャーなバンドだということを考えると、ものすごくど真ん中のJ-POPなのか、それでもちょっとはずれたロックなのか。そういうことから考えないといけなかった。
1年後のトレンドを予想しながら楽曲を作る
そういう意味では昨年から話をしていたので、映画の公開時期にあたる今年12月にはやっている音はどういうものなのか、という1年後のトレンドも予想しながら考えないといけなかった。もしその予想が当たらなくても、僕らがはやらせるくらいの気持ちでいましたね。亀田さんが最初に作ってくださった「CRUDE PLAY」のデモは、ストリングスやウィンドチャイムやグロッケンが鳴るJ-POPど真ん中という感じの曲でした。でも僕はCRUDE PLAYはもっとエッジがあったほうがいいと思っていました。作曲を担当した秋のキャラクターを考えても、もう少し毒がないといけない。そういうところからどんどん修正をお願いしていきました。
――逆に言えば、しっかりとしたビジョンがあったということですよね。具体的な音はなかったかもしれないですが、バンドの方向性というものが。
そうですね、ただ、それを言葉にして伝えるのはすごく難しかったですね。だからいろいろなアーティストを引き合いに出し、CDを持ち寄ったりもしたのですが、それでも難しかったです。今までにまったくないバンドを、イチから作ろうとしているので。だからダメ出しと言うよりは、共同作業と言って欲しいです(笑)。特に最後に流れる曲「ちっぽけな愛のうた」は難しく、一度作っていただいたデモをナシにしたりもしました。そのときはとりあえず一緒にご飯を食べにいきました。
――あらためて話し合おうということですね。
これじゃないものを作りましょうと。そのときはまだ脚本が固まっていなかったので、脚本が変わると、最後に語るべき言葉も、当然、変わってくるのです。だからナシになったのは亀田さんのせいではなく、脚本ができていなかったところに原因があるので、つまるところ僕なのです(笑)。
(撮影:梅谷 秀司)
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