佐藤健演じる天才クリエーターの苦悩と切ない恋模様、そして彼を取り巻く音楽業界の光と影をシビアに描き出した『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(通称『カノ嘘』)が、全国東宝系にて公開中だ。少女コミック雑誌『Cheese! 』で大人気連載中の青木琴美の同名作品が原作で、累計450万部を超える大ヒットを記録している。
劇中に登場する人気バンド「CRUDE PLAY」を、三浦翔平、窪田正孝、水田航生、浅香航大という人気若手俳優たちが演じ、実際に彼らをビクターエンタテインメントからCDデビューさせるというユニークな試みを実施。椎名林檎、スピッツなど数多くのアーティストのプロデュースやアレンジを手掛けた亀田誠治が音楽プロデューサーとして参加し、彼らのデビュー曲「サヨナラの準備は、もうできていた」はオリコンウイークリーチャートで初登場9位というヒットを記録した。
本作のメガホンを取ったのは『FLOWERS フラワーズ』の小泉徳宏監督。デビュー直後のYUIを主演に迎えた『タイヨウのうた』では、YUIの初々しい演技と、観客の心を揺さぶるような演奏シーンが話題を集め、映画は興収11億円のヒットを記録した。小泉監督にとっても『タイヨウのうた』はデビュー作となるが、そこで見せた音楽映画に対する確かな演出力を、新作となる『カノ嘘』でも存分に発揮している。そこで今回は小泉監督に、本作を手掛けた背景、主演の佐藤健、音楽プロデューサーの亀田誠治らと行った共同作業について聞いた。
――少女マンガが原作の本作ですが、小泉監督はビジネスマンの男性層にも、本作をぜひ見てもらいたいと話していたそうですが。
一見、20代や30代の男性が寄り付かないような雰囲気が出てしまっているこの映画ですが、実際の内容はむしろその逆で、男性が見ても十分楽しめる、というより初めから男性層をかなり意識して作っています。音楽業界を舞台にしている特殊性はありますが、恋愛以外に男の友情や仕事をしていくうえでの悩みなどの要素もかなり盛り込んでいて、ライバルの存在があったり、目の前に立ちはだかる上司が登場したりと、どの業界でも当てはまるような構造になっています。そういう意味では、男性が絶対に共感できる作品なのです。
――本作のオファーがあった際に、まずは原作を読んだと思うのですが、そのときの感想はどのようなものだったのでしょうか?
ほとんどの男性がそうだと思いますが、僕も基本的に少女マンガといえば、恋愛に終始しているものが多いように感じていました。だから、そういう話なのかと思って読み進めたら、それだけではなかった。ビジネスの側面とか、仕事をするうえでの悩みといったものが、ものがすごくリアルに描かれていて、僕自身にも思い当たるところがたくさんありました。この原作なら、ただの恋愛映画では終わらないように思ったのです。それこそが『カノ嘘』の特徴ですから。
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