『カノ嘘』はただの恋愛映画じゃない 小泉徳宏監督が語る『カノ嘘』の本当の見方

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――小泉監督が『タイヨウのうた』のメガホンを取ったのは25歳のときだったそうですが、それから7~8年ほど経って、気持ちの面で変わった部分はありますか?

まったく違っていますね。デビュー当時は、自分でも何をやっているのかわからなかった。目の前の課題にベストを尽くすことで精いっぱいでしたから。そういう意味では僕自身、スキルも上がったし視野も広がったと思います。今回は、目の前のことだけでなく、先のことも周りのことも見えるようになりました。同じ「恋愛」「歌を歌う少女」だとしても、年相応の、大人の作品になったような気がします。

若い俳優のよさを引き出す秘訣とは?

――小泉監督は若い俳優と組む機会が多いように思いますが、彼らのよさを引き出す秘訣、盛り上げる秘訣といったものはあるのですか?

彼らの考えをよく聞いて、反映できるところは生かし、ズレていれば一緒に着地点を探すということでしょうか。よく、映画は監督のものだと言われたりしますが、役はやはり役者のものだと思うのです。佐藤さんの代わりに僕が秋を演じることは絶対にできないですから。彼らが考えていることは必ず芝居にも出るし、芝居に出るということは映画にも出てくる。だから彼らの考えをよく聞くということが秘訣なのかなと思います。

――俳優とのディスカッションの時間はとるほうですか?

俳優と監督はすごく仲良しなんじゃないかと思われがちですが、皆さんが思うほど、俳優とじっくり話せる時間は、実はないのです。お互い忙しいですからね。ただ今回は、佐藤さんが時間をたくさん作ってくれたので、この映画の話をたくさんしました。ほかの現場と比べてディスカッションの時間が多かったと、佐藤さん本人も言っていたようです。オーディションで選んだ理子役の大原さんとも、彼女がどういう考えの持ち主なのかを知るために、オーディションの最中からたくさん話をしました。

――やはり話し合うことが小泉演出の秘訣なのでしょうか?

もちろん話し合わなくても理解し合うことができれば、そのほうがいいでしょう。佐藤さんの場合は、ただでさえ話す時間を持てたのに、そのうえ、感覚が似ているように感じました。たとえば芝居をしているときに、「もっと明るくしてみて」と言うと、役者さんによっては、意識しすぎて明るくなりすぎたりすることもある。すると「いや、そこまでではなかった」と思いながら、あわてて修正していくこともあるのですが、佐藤さんの場合は、とてもいいところを突いてくるんですよ。その点でもやりやすい俳優さんでしたね。

(C)2013 青木琴美・小学館/「カノジョは嘘を愛しすぎてる」製作委員会

――『タイヨウのうた』主演のYUIさんも、『カノ嘘』の大原櫻子さんも、演技は初めてだったと思うのですが。その点で心掛けていることはありますか?

新人の役者さんの場合は、演じる本人の性質と役柄の間に、少しでも似ているところを見つけないといけません。「いきなり別人になれ」と言うのは難しいですから。YUIさんの場合は、彼女がどういう考えを持っているのかを聞いて、YUIさんに合わせて脚本を書き直すこともできました。でも今回は、もともと小枝理子という確立されたキャラクターがすでに原作にあったので、そもそもその素質を持っている女の子を見つけ出し、さらにその子から理子らしさをどんどん引き出していく作業になりました。

若い人と仕事をするときには、その人と話しながら、その人の本質をよく理解しておけば、どういうふうに自分が指示すべきか、さじ加減がわかるようになる。こう言えば、この人だったらこういうふうにやってくれるだろう、というのが何となくわかるようになってくるのです。

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