東大出た「桜蔭の問題児」の壮絶だった44年 東大女子が抱える母親との葛藤

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東大で交際した男性は地方出身のイケメンだったという。女子禁制の寮なのに夜中に忍び込んだりもした。彼は自信たっぷりのときと、自信がない間を揺れ動くような、繊細な男性だった。3人兄弟の長男で、お父さんはブルーカラー。貧しい中、東京に出してもらった。

「東大に入ったら、周りがお金持ちばかりで打ちひしがれたと言っていました。彼は『うちの親は学歴もないし、お前たち金持ちにはわからない世界があるんだ』とよく言っていました」

民間企業に入る気はまったくなかった

「確かに、桜蔭という私立に6年間通うには、それなりのお金も必要だった、と思います。今の私だったら、『あなたのご家族立派だよ』と彼に言ってあげられたと思う。しかし、あまりに私は若すぎて、経済格差もわからなかった。今、彼は大学教授になっているはずです」

3年になって法学部に進む。国連の機関に進むという夢は、いつの間にか忘れた。

「法曹関係に進んで弁護士になるか、官僚になるか、一流企業に入る」しか選択肢がないと思っている法学部の学生たちだったが、折からの氷河期で、民間企業の新卒募集ががくんと落ちた。

田中は川人博弁護士が授業を行う川人ゼミを取っていて、そこでブラック企業の実態を把握していた。

「上司にぺこぺこして使われるのは嫌」だと、民間企業に入る気はなかった。田中の両親は、企業で働いたことがないので、就職しなさいとは言わなかった。

「消去法で、司法試験を選んだんです。ニートのように家にいて、ひたすら勉強していました。

これが当時の私、Tシャツとジーンズ。この頃は、かたくなに女性らしい恰好をしたくなくて、男か女かわからないような恰好でした。東大を出て司法試験の勉強中は、美容院にお金を使って、ちゃらちゃらしている場合ではないと思ってました」

写真の中の田中は、笑ってはいなかった。

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