東大出た「桜蔭の問題児」の壮絶だった44年 東大女子が抱える母親との葛藤

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厳しい校風。桜蔭の先生は、勉強していて、すごいのかもしれないけれど、女性特有の柔らかさやセクシーさに欠けている。「ああいうおばさんになりたくない」と思っていた。

田中は埼玉県出身。父親は東大、母親はお茶の水女子大の出身。両親ともに大学の教授をしており、教育には熱心だった。

「勉強しないと不幸になる」という教え

「小さい頃は、まだ両親は助手だったので、大学の教員になるために必死でした。家じゅうがピリピリしていて、子どもが騒ぐと、うるさいと怒られた。食卓の上には書物だとかが散乱していて、少し動かすと落ちてくるような家――。両親は『お前は俺たちの子どもだろう。勉強しないことは得をもたらさない。勉強しないやつは不幸になる』そう言いました。この教えを20代の初めまで信じてました」

本が読めるようになったら、問題集を渡されて「やっておけ」と言われる。「妹や弟はかわいがられていたのに、なぜ私だけ」と思った。

「家では、絵里ちゃん、よくできたね、と褒められたことはなく、小さな失敗でも怒られる、大きな失敗ではもっと怒られる。どうして毎日毎日怒られるのだろうと。母親はできて当たり前だと思っているので、ダメだったら怒るんですね。塾では、言われたそばから憶える、頭の良い子、という評価でした。

でも私は失敗して、みんなの前で笑われるのが怖かった。『絵里ちゃんは、頭がいいと思っていたのにできないじゃん』。そう言われることに恐怖を感じて必死に勉強しました。勉強しないで遊んでばかりいる友達のところにもサンタさんはプレゼントをくれるのに、頑張った私には、なぜこんなちょっぴりしかプレゼントをくれないの、とも思いました」

小6で中学受験を考えて進学塾に入れられた。母は「私は忙しいのであんたは自分でちゃんとしなさい」と放置。1年通って、御三家の桜蔭に合格した。

「ここまで勉強してきたのに報われない、今までのことは無駄だったのかと思いたくないので、やるしかなかった」

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