東大出た「桜蔭の問題児」の壮絶だった44年 東大女子が抱える母親との葛藤

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こういう状態を、コンコルド効果という。もともとは超音速旅客機、コンコルドが巨額の開発費を使い、就航までこぎつけたのに、著しく燃費が悪いことなどを理由にプロジェクトが中止された、その失敗にまつわる心理現象の1つ。

ある対象に対して金銭的、精神的、時間的な投資をし続けることが損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまでの投資を惜しみ、やめられない心理状態のことをいう。田中の心の中には、この心理的圧迫が常にあった。

教科書を一度読めばすべて覚えてしまう

田中になぜ、桜蔭という学校で問題を起こしていたのか聞いた。

「禁止されるテレビに出たのは、家族への不満があって、ほかの世界に信頼できる人が欲しかったのです。地味に生きてると、知り合う人が限られているので、自分を拡散させて、その中で気の合う人を見つけようと思いました。

最初は、みんなにどう思われるか怖かったけれど、自分とすごく合う人とメディアを通じて出会えるほうのメリットが大きかった。高校生のときからそう思っていました。この家にこもっていても何も始まらない、と考えていました」

桜蔭でも勉強はよくできた。1度教科書を読んだり、見たりすると覚えてしまう。「カメラアイ(瞬間記憶能力)があったのかもしれませんね」と田中は笑う。友人たちは「絵里ちゃんの理解度はすごかった」と今でも言ってくれるという。

「友人たちは塾に行っていたので、学校でやって塾で聞いてわかった、できた、だけれど、それがなくてわかるのだからすごいというわけです。

高3のときに塾に少し行った程度。学校までの通学時間がかかるうえに、さらに塾となると、それは無理でした。得意科目は英語。マドンナやホイットニー・ヒューストンを聴きながら、勉強していました」

東大に入るような人は、どこかでスイッチが入って、勉強するようになる。勉強していなくて遊んでいては絶対に入れない、ということを知っているので、努力し続けるのである。田中もそうだった。母親にニンジンを鼻先にぶら下げられて、勉強するように仕向けられて以来、ずっと走り続けていた。

次ページ代々「東大至上主義」だった
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