「パナソニックES社」が台湾にこだわるワケ アジアの住宅ビジネスモデル変革に挑む
パナソニックは昨年、創業100周年を迎えた。昨年10月に東京で行った100周年イベントの基調講演で津賀一宏社長は、パナソニックの次の100年を「くらしアップデート業」を営む企業であると定義した。さまざまな地域、さまざまな環境で暮らす人々の環境変化に応じて最適化したソリューションを提案し続ける、と。
100年前の1918年、当時の松下電気器具製作所が創業商品として発売したアタッチメントプラグは、天井からぶら下がる電灯から電源をとるための配線器具で、その創業商品を引き継いでいるのが旧松下電工、現パナソニック エコソリューションズ社(ES社)。現在、ES社は国内の配線器具市場(コンセント、壁スイッチ等)でトップシェア、台湾など東南アジア市場でも高いシェアを誇っている。
国内住宅市場は頭打ち、アジアで商機をつかむ
そのES社がこのほど、海外事業を強化する方針を打ち出した。パナソニックグループとしては家電製品や電気自動車用バッテリーなどですでに海外市場を開拓しているが、ES社はほかのグループ企業に比べると海外進出が出遅れている感は否めない。地域の文化や風習が色濃く反映する住宅設備は、それぞれにローカライズされた商品・販売体制・施工体制が必要なため、進出に時間がかかってしまうからだ。
ES社はこれまで地道に販売網の構築や現地に適した商品開発を続けており、徐々に売り上げを伸ばしている。これまで仕込んできた体制が整ったことに加え、アジア地域の住宅を取り巻く環境が劇的に変化していることから、ここを商機と捉え営業強化に動き出したものだ。
現在、ES社ハウジング事業部の海外売上高は約50億円と小さい(2018年度見込み)。なお、ES社全体の売上高は1兆6235億円(2017年度実績)。同社は2030年度には海外事業で1000億円の売り上げを目指し、台湾を皮切りにアジア諸国でハウジング事業を拡大していく考えである。
ES社が海外事業に目を向ける背景には、日本が抱えた社会課題に対する危機感がある。総務省によると、日本の総人口は2005年の1億2777万人をピークに減少し続け、2050年には9515万人になると見られている。生産年齢人口は3500万人減少の4930万人と大幅減、逆に高齢人口は1200万人増加の3764万人を予測している。高齢者単身世帯が増加し、子どもを持つ夫婦世帯は1465万から745万へと半減すると見られている。つまり、国内の一般住宅需要は減る一方であり、そこだけにしがみついていては企業としての未来がないという判断だ。
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