「パナソニックES社」が台湾にこだわるワケ アジアの住宅ビジネスモデル変革に挑む

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インドネシアでは、双日および現地の大手デベロッパーとジョイントベンチャーを設立し、ジャカルタから40キロメートルほど離れた地域に建設中の大規模スマートタウン「SAVASA」の一部で分譲住宅共同事業をスタートしている。このSAVASAは2030年までに最大約2500戸、人口約1万人を目指す街づくりプロジェクトで、事業規模は300億円。既存の工業団地に隣接するかたちで行政機関や教育機関、医療施設、商業施設なども建設、1つの大きな街を新たに作ろうというものだ。

プロジェクト総面積は山手線内側の半分ほどになるという。パナソニックらJVはすでに第1期分の約13ヘクタール、全811戸の建設に着手、昨年11月に50戸を先行発売したところ即完売した。同プロジェクトでは戸建て住宅だけでなくLED街灯、防犯カメラなどの街区セキュリティ、共用部のソーラー発電など街づくりも担う。

アジアの電灯線LAN事業、高速化・長距離化で導入拡大

ハウジング事業とは少々毛色が異なるが、ES社が台湾からアジア、世界への拡大を狙う事業がもう1つある。HD-PLC、いわゆる電灯線LANだ。電灯線LANは、既存の電気配線を通じてデータを送るネットワーク機器で、10数年前に日本でもちょっとしたブームになった。

しかし、ほかの家電製品を使用するとコンセントからノイズが乗り、伝送速度が著しく落ちるなどの理由で普及しなかった。しかしこの間、他機器の影響を抑え、伝送速度を上げるべく開発を続けてきた。2015年にはマルチホップ技術を確立し、最高速度240Mbps、最大10ホップで2~3キロメートルの長距離通信が可能となった。昨年には最大速度1Gbpsのクアトロコアチップの開発にも成功しており、2020年までの製品化を予定しているところだという。このマルチホップ技術と、実証実験中に100%のデータ収集率を達成したことが評価され、昨年、台湾電力のスマートメーターに同社のHD-PLCの採用が決定、12月から導入が始まった。

台湾の場合、マンションの各戸に電気メーターはなく、地下に全戸のメーターがまとめて設置されている。そのスマートメーター/リピーター/コンセントレーターそれぞれに同社のHD-PLC通信ユニットと通信基盤が組み込まれ、各戸の電力使用量を15分間隔でセンターに送る仕組みだ。

パナソニックでは台北近郊の新北市に宿泊できるショールームを設置し、日本式の収納、バリアフリー設備が体験できるようにしている。和室も人気だという(筆者撮影)

「今後、台湾の主要都市26万世帯にスマートメーターの導入が始まる予定だが、その通信方式の一つとして当社のHD-PLCが採用された。こまめにデータを収集することで無駄なく効率的な電力発電の運用が可能となり、エネルギー政策が大きく変わる。台湾の実績をもとに、他地域にも拡大していきたい」とパナソニック ビジネスイノベーション本部HD-PLCプロジェクト主幹の田中祥介氏は意気込む。2024年には300万世帯に設置する計画なので、すべてにパナソニック製品が採用されれば、かなり大きな実績になることは間違いない。

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