「パナソニックES社」が台湾にこだわるワケ

アジアの住宅ビジネスモデル変革に挑む

これを解決すべく、ES社はアジア地域で内装の工業化を進めようとしているのである。その舞台は浴室だ。アジア地域の浴室は「湿式工法」と呼ばれ、日本でいう左官業者がコンクリートにタイルを1枚1枚貼り付けて作りあげていく。浴槽はなく(あってもただの飾り)、シャワーとトイレ、洗面所が一体化した、ビジネスホテルのユニットバスに近い作りだ。

ES社は、こうしたアジア独特の商慣習を打ちこわし、日本式のシステムバスの導入を進めていく考えだ。日本同様、工場でプレカットした樹脂製の壁・天井・床材を現地で組み立てる。さらに、シャワーゾーンとトイレ・洗面台ゾーンをガラスドアで分離する「乾湿分離」方式も導入する。従来のシャワー・トイレ一体式ではトイレにシャワーの水がかかり、また、掃除するときにはシャワーの水を使って一気にトイレと洗面台も水洗いする風習があるため、電気を使う温水洗浄便座が使えなかった。乾湿分離式にすることでトイレゾーンに水がかからないため同社の温水洗浄便座も同時に販売できる。

パナソニックでは、バスと洗面所・トイレを分ける提案を進めている。台湾をはじめアジア地域では湯船につかる習慣はないが、富裕層の間ではステータスの証しとして主寝室に湯船付きのバスルームを設置することがブームとなっているため、日本のノウハウがそのまま持ち込める(筆者撮影)

実は台湾ではすでにTOTOとLIXILがトイレ分野で先行して進出しており、パナソニックは両社の後塵を拝する格好となっている。ただ、競合は従来どおりの「湿式工法」に後付で納品するビジネスモデル。後発が従来工法では勝てないと同社は考え、台湾およびアジア地域において浴室施工のビジネスモデル自体を変え、それにマッチした温水洗浄便座付きトイレで巻き返そうとしているのである。

従来の「湿式」に対して、プレカットした部材を現地で組み立てる工法を「乾式」と呼ぶが、これにより工事品質が高品質かつ均一化するだけでなく、工期も従来の3分の1に短縮し、引き渡しが大幅に早くなるというメリットもある。また、日本式のシャワーとトイレ・洗面所を分離する「乾湿分離方式」で生活の質が変わることは、ベトナムなど他のアジア地域の富裕層にとって大きなセールスポイントになると同社では考えている。

狭い日本だからこその高機能技術をアジアに転用

電動昇降棚(筆者撮影)

浴室だけでなく、同社はアジア、とくに台湾において「日式(日本式)」の生活様式を広めたい考えだ。すでに構築した現地代理店網を通じてシステムキッチンの販売を展開しているが、そこでセールスポイントとしているのが2つめのキーワードの「高機能化」である。

台湾の富裕層の間では海外製のキッチンが人気で、日本製品とドイツなどの欧州製品が人気を二分している。日本製品の場合、台湾で製造した日本メーカー製品ではなく、日本で製造・輸入した製品がブランドとして価値が高い。その中でも、パナソニック製品が注目されているのが、高い収納性をはじめとした使い勝手のよさだ。

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