「パナソニックES社」が台湾にこだわるワケ アジアの住宅ビジネスモデル変革に挑む

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パナソニック エコソリューションズの山田昌司副社長兼ハウジングシステム事業部長(筆者撮影)

ES社はキッチン・バスルーム・給湯器・床・壁といった住宅設備・建材を扱うハウジングシステム事業部、太陽光発電を扱うエナジーシステム事業部、照明機器を扱うライティング事業部からなり、傘下にはハウスメーカーのパナソニック ホームズも抱えているなど、パナソニックグループの中でも住宅関連事業に重きを置いた企業である。

「ハウジング事業でフォーカスしているのは台湾、ASEAN、インド、中国の4地域。特に、台湾とASEANを先行して取り組む。その際、戦略の核となるのは工業化・高機能化・高齢化となる」と、ES社ハウジングシステム事業部の山田昌司副社長兼事業部長は説明する。これらは同社がこれまで日本で経験してきたもので、日本で培ってきたノウハウを投入することで差別化を図り、アジア事業の拡大を目論む。

アジアでは一般的な「スケルトン」部屋

1つめの工業化は、アジアにおける社会的課題とアジアならではのビジネスモデルに密接に関わってくる。台湾・ASEAN諸国は経済の発展、近代化に伴い旺盛な住宅需要がありながら、近年は労働力不足に悩んでいる。労働者が日本や中国をはじめとした諸外国に流出しているためだ。さらに、そうした労働力不足を背景に賃金高騰も問題化している。

台湾では洗面所、トイレ、シャワーが1つの部屋になっている。写真のような高級マンションの一部はシャワーとトイレの間にガラスの仕切りがあるが、仕切りがないマンションはかなり多い(筆者撮影)

一方で、アジアの住宅市場は日本とはまったく異なる商習慣がある。日本の場合、一戸建てもマンションも引き渡し時には内装外装すべてが整っており、家具と家電製品を運び込めばすぐに住める状態になっている。しかし、アジアでは「スケルトン」と呼ばれる状態で購入者に引き渡されるのが一般的。スケルトンとは内装が施されていない状態で、例えば中国では壁紙・床材すらも貼られていないコンクリート打ちっぱなしの状態で引き渡される。購入者はその後、自分で内装業者に依頼し、自分好みの壁紙・床材、キッチンなどの内装を仕上げていくことになる。つまり、同じマンションでも内装やキッチン・バスなどの住宅設備がまったく異なるのだ。

このため、ES社のような住宅機器メーカーの営業先はマンション開発デベロッパーではなく、内装施工業者やその代理店、そしてエンドユーザーとなる。後述するが、ES社はすでに台湾で営業活動を展開しており、販売代理店を通じてマンションにシステムキッチンを納入している。ただ、こうしたスケルトン方式は、昔ながらの職人システムに頼ることが多く、そのスキルによって仕上がりの品質にばらつきが出る。加えて昨今の熟練工不足がさらに品質の低下に拍車をかけている。

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