「パナソニックES社」が台湾にこだわるワケ アジアの住宅ビジネスモデル変革に挑む

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台湾電力は大規模納入の事例となるが、これ以外にもすでにHD-PLCの納入実績がいくつもあるという。例えば、日本の明治時代に建築された石造りの建造物。今は国際カンファレンス会場として使用されているため、ネットワーク対応が必要となった。そこでWi-Fiを導入したが石造りなので電波の踏圧距離が短く3室しか使えない。全室でネットワークを利用したいが文化財指定されている歴史的建造物なので穴を開けるわけにもいかない。そこで、すでに配線されている電気線を使ったHD-PLCが採用された。

HD-PLCモジュールの実物(筆者撮影)

中国上海では、道路の街灯3000本にHD-PLCが導入されている。照明の調光制御や故障検知のほか、監視カメラ、観光客向けの街角Wi-Fiスポットとしてネットワークを利用しているものだ。電灯を点けるための電気配線を有効活用したよい例と言える。中国では、地下鉄でもテスト導入が進んでいる。客車両内のデジタルサイネージ、監視カメラ、制御のために使われているという。

日本では、高層ビルのエレベーターに導入された事例もある。エレベーターの制御や監視カメラ、最近ではデジタルサイネージも搭載されており、ネットワーク配線が必須となっているが、これを電気配線と併用できればケーブルの軽量化が図れ、その分、運転のための電気代が削減できる。ケーブル本数が削減できればメンテナンスも簡便化できる。さらに、ダム点検用の水中ロボットや、無線LANや無線電話が通じない地下トンネル工事・保守点検でも使用例がある。

パナソニックが掲げる“くらしアップデート企業”

津賀社長は100周年の講演で「パナソニックは何者なのかを自問自答してきた。これまでも、ものづくりをしたい、というより、人々の暮らしをよくしたいという思いが先にあり、それを実現させるためにものづくりが必要だった。今後も、一人ひとりの暮らしを少しでもよくし、より暮らしやすい社会を作り上げていく」ことが存在意義とし、冒頭の“くらしアップデート業”発言へとつなげる。それは日本だけでなく、成長期にあるアジア、そこからさらに世界へと広げていくことを狙っている。

現在、IT分野では外国企業に何歩も先を行かれているが、暮らしのインフラ部分については日本企業も世界で戦えるようになるのではないだろうか。パナソニックグループハウジング事業のアジア展開は、そんな希望を抱かせてくれる。

近藤 克己 フリーライター

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こんどう かつみ / Katsumi Kondo

1966年生まれ。福島県出身。明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒。ロジスティクス分野の業界紙記者、IT&家電製品の月刊誌記者・編集長を経て、独立。現在、フリーライターとして活動中。得意分野は流通、物流、生活家電。

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