そして今、中国人ホワイトカラー層に受けているのが、「スタバのあるライフスタイル」というわけです。元来、おいしいコーヒーは陶磁器のカップで味わうものであって、紙コップにかぶせたプラスチックのフタに開けられた小さな穴からコーヒーをすするのはいかがなものかと思いますが、洋の東西を問わず、若くてアクティブな人たちには、紙コップやタンブラー入りのスタバのコーヒーを片手に会議に出席したり、街を闊歩したりするのがおしゃれに見えるのでしょう。
また、絶望的に接客態度の悪い中国のサービス業の中にあって、スタバの店員の接客は高水準です。さすがと言うべきか、店員をよく選抜・訓練しているように思われますし、外国人客に対する英語での接客も堂に入ったものです。フレンドリーでテキパキとしたサービスのよさも、中国人を引きつける要因のひとつです。
もうひとつ見逃せないのが、商品ラインの細やかな現地化戦略です。アメリカ文化にあこがれる中国人ユーザーですが、当然のことながら自国の文化への愛着も強いので、スターバックスが提供する中国茶、粽(ちまき)、月餅などのローカルメニューや季節商品に対しても親近感を抱いています。
その結果として、「スタバの商品や店舗空間も好きだが、そもそもスタバが提唱するライフスタイルや価値観が心地よい」と感じるユーザーが増えています。「スタバが暴利をむさぼっている」とする全国メディアの報道に、「価格に見合った価値は十分ある」と反論するのは、そうしたブランド・サポーターたちなのです。
価格設定がブランドのポジションを決める
今回のスタバ価格論争の中でもうひとつ重要な視点は、ブランド戦略です。通常、価格は「マーケティングの4P」として、市場での競争力や利益管理の観点から定められますが、それと同時に、価格は商品やサービスのブランド価値を明示するシンボルでもあります。
日本の製品の値段は、原価に販売管理費と利益を乗せる方式で「ちゃんと利益は出るが決して法外ではない」ように設定されますが、市場やターゲット消費者によっては、とんでもない高値をつけたほうがよく売れ、そのことによってブランドにプレミアムイメージがつくケースがあります。
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