高いと思うなら買わなければいいだけの話
しかし、一方的に外国企業を非難して、商品のボイコットを呼びかけていた古いスタイルの世論喚起とは異なり、今回のスターバックス批判に対しては、中国人ユーザーからスタバ擁護の声が挙がっています。
いわく、「自分たちは欧米ブランドを盲信して高いものを買わされているのではない。サービスのよさや居心地のよさといった価値を認めて利用しているのだ」「高価格戦略はスターバックスだけでなく、ハーゲンダッツなども採用するマーケティング戦略であって、きわめて正常な経済活動、批判される筋合いのものではない」「コーヒーの原価だけ見て価格の不当性を訴える人たちは、ブランドイメージや体験に価値を見出すユーザーの満足度を理解していない」などの意見がネット上だけでなく、China Daily紙に寄稿するコラムニストからも出されています(11月2日本紙)。
ミクロ経済学が言う「需要と供給の均衡理論」を持ち出すまでもなく、ユーザーはおカネに見合った価値があると思うから「高いコーヒー」を喜んで飲むわけです。
中国の都市部に雨後の竹の子のように繁殖する「シアトル系カフェもどき」には、イギリス企業が展開する「Costa Coffee」、香港から来た「Pacific Coffee」、中国資本の「SPR Coffee」などの大規模チェーンが多数ありますが、どこでも値段はスタバに近く設定されており、決して安くはありません。しかし、コーヒーやカフェラテ1杯25元から35元もするこうした店のほとんどが客でにぎわっています。スタバの値段は中国市場の需要と供給の均衡点を示しているというわけです。
ちなみに、スターバックスは現在世界に約2万店を展開しており、そのうちアメリカが1万1000店、日本1000店、中国1000店となっています。中国では、2012年に500店舗を新規出店して拡大ペースを加速しており、2015年までに1500店舗まで増やす計画。「高くても喜んで買う」消費者が、まだ多く存在することを見越しているようです。
アメリカン・ライフ・スタイルを受け入れる中国の消費者
スタバ人気の要因は、中国人の可処分所得の上昇だけでなく、ライフスタイルの変化にもあると思います。
スターバックスの創始者ハワード・シュルツは、もともとはイタリアンスタイルの本物のエスプレッソコーヒーにあこがれて、それをアメリカに普及させようと思ったわけですが、結果的には伝統的・本格的カフェとはまったく異なる「新しいコーヒー文化」を創ってしまいました。
スタバのお店は、皆さんよくご承知のように、現代アメリカのホワイトカラー的価値観とライフスタイルを反映した、カジュアルで都会的、機能的かつ個人的なリラックス空間です。また、通勤途上に購入して、紙コップからコーヒーをすすりながら歩く「on-the-go」スタイルを普及させたのもスタバです。
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