「似た人ばかり」採用する会社に欠けた視点 同質化された中で新しいモノは生み出せない
イノベーション――。
この言葉をメディアで聞かない日はないだろう。書籍の全文を検索できるグーグル・ブックスで「innovation(イノベーション)」と検索すると、4000万件以上ヒットする。カンファレンス、コンサルティング会社、大学、マネジャー向けプログラム……。どこに行ってもイノベーションが大きな課題として取り上げられている。
確かにイノベーションは重要だ。これによって人類の新しい道が開け、私たちの生活に影響を及ぼす重大な課題を解決できるようになる。企業に関して言うなら、イノベーション、つまり業界や市場にとって価値ある新しい製品・サービスを生み出すことで存続することができる。
イノベーションを生み出せない環境
イノベーションが重要なのに、企業はなぜそれに逆らうような仕組みになっているのか疑問だ。マネジャーは皆、同じ考え方をするよう訓練され、特定の部署だけに独創的なアイディアを生み出すことを求める。
会社は同じ方法で同じ大学の学生を採用し、同じような仕事に就かせる。そして彼らは似たような成果を挙げるだろう。しかし、誰もが同じやり方で同じことをしていたら、革新も差別化も期待できない。
イノベーションのベースとなるのは創造力だ。創造力とは新しいものをつくり出したり、新しい考え方やアイディアを生み出したり、ユニークな発想で無関係と思われていたものを結びつけたりする能力だ。
かつてないスピードで経済が変化する中、企業はどのような従業員を「適材」とするのか見直しを迫られている。そして今日のような時代には、創造的な人々が必要だ。そもそも「創造的で革新的な企業」などというものは存在しない。あるのは、そういう企業をつくる「創造的で革新的な人々」である。すべては「人」から始まるのだ。
ビジネスモデルが前触れもなく陳腐化し、競合が思わぬところから急に出現する今の時代、ビジネスにおいて「論理的・合理的」判断だけに頼ることはできない。だからこそ、ビジネスに創造性をもたらすアートの世界のスキルやプロセス、知識が必要となっている。たとえば、対象を細部まで観察する、現状に疑問を投げかけ続ける、アイディアを創出する、無関係に見えるものを結びつける、といったアーティストの視点を取り入れることだ。
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